「日本の基礎研究に対する支援が不足している」(大阪大学の坂口志文特任教授)
「基礎研究を重視して大きくする施策をお願いしたい」(京都大学の北川進特別教授)
2025年のノーベル賞に選ばれた坂口氏と北川氏が、受賞の一報を受けた直後の首相や文部科学相との電話の中で述べた言葉だ。両氏はその後、文部科学省を訪問した際も、基礎研究や若手研究者への支援を求めている。
両氏だけではない。近年の日本人ノーベル賞受賞者はほぼ例外なく、受賞後の記者会見や講演で「基礎研究の継続的支援」を訴えてきた。背景には「このままでは日本の科学が危うい」という共通認識がある。
実際、日本の研究力はこの20年あまりの間に相対的に衰退し、多くの分野で存在感を失いつつある。日本発の自然科学系の総論文数はかつての1998~2000年に2位だったのが20~22年には5位に。注目度の高い「トップ10%論文」の数も4位から13位へと転落している(いずれも分数カウント法)。
自然科学分野のノーベル賞3賞で国別の推移をみると、00年代、10年代ともに日本人の割合が10%を超えていたが、20~24年は5%未満だ。ノーベル賞につながる研究成果の発表から受賞までの年数はおおむね25~30年なので、今から30年後はノーベル賞の日本人受賞者はほぼいなくなっていてもおかしくない。
「選択と集中」で広がった大学間格差
研究力衰退の要因について多くの識者が指摘するのは、04年の国立大学法人化以降に起きた国からの運営費交付金の減額と、それに伴う「選択と集中」路線のさまざまな施策の影響だ。文部科学省によれば、法定福利費の増加や消費税改定の影響などによる目減りを考慮すると、運営費交付金の実質的な減額は約1900億円に及ぶという。
「選択と集中」は、競争的研究資金を増やすだけではなく、国が主導する大型研究開発プロジェクトを林立させたり、特定の大学を手厚く支援したりとさまざまな形で行われてきた。
後者については、たとえば国立大学を3つのグループに分け、各グループ内で評価の高い大学から運営費交付金を傾斜配分する仕組み(16年度~)、国際拠点となりうる国立大学法人(現9校)を重点支援する「指定国立大学法人制度」(17年度~)がある。





















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