全国で起きている大学や研究機関の「雇い止め」
意欲も実績もある任期制の研究者が、それまでの成果や進行中の研究プロジェクトの精査をなされることもなく、一方的に解雇を告げられる。そんな「雇い止め」が、全国各地の大学や研究機関で起きている。いわば研究者の「使い捨て」である。日本の研究力低下の要因の1つと指摘される深刻な問題だ。
訴訟に発展したケースも少なくないが、その1つ、理化学研究所(本部・埼玉県和光市)を相手に、男性研究者Aさん(65)が地位確認を求めて起こした訴訟について、東京高裁でこのほど和解が成立した。
10月24日に東京都内で記者会見したAさんや弁護団によると、研究室がなくなるなど裁判で求めていた地位確認が実質的に難しくなったことを踏まえ、裁判所の提案を受け入れたという。
理研の研究者は約1800人いるが、Aさんによると、そのうち7割ほどは任期制だという。Aさんは「任期制研究者が理研のポテンシャルを支えているのに、理研は無期雇用に転換させたくないという理由だけで大量解雇に踏み切り、研究力の低下を招いた」と訴えた。
国際的に定評のある欧州系の学術出版社「シュプリンガー・ネイチャー」による大学や研究機関の国際ランキングで、2010年代は70位前後で推移していた理研の順位は、23年以降、100位以下に後退している。
あとで述べるように、雇い止めの根本原因は解決していない。日本の研究基盤をこれ以上衰えさせないためにも、研究者の雇用の安定化を早急に検討するべきだ。




















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