有料会員限定

競争的資金獲得のプロジェクト代表も「使い捨て」。理化学研究所の雇い止め訴訟当事者が語った「大量解雇が研究力低下を招いた」

✎ 1〜 ✎ 5 ✎ 6 ✎ 7 ✎ 8
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

有料会員限定記事の印刷ページの表示は、有料会員登録が必要です。

はこちら

はこちら

縮小
日本を代表するトップ研究機関である理化学研究所(編集部撮影)
科学や科学技術は、その時々の社会や政治、経済の影響を直接受けることもあれば、社会に変革(時には事件や事故)をもたらすこともある。本連載では、そのリアルな姿を通して今の時代を読み解いていく。

全国で起きている大学や研究機関の「雇い止め」

意欲も実績もある任期制の研究者が、それまでの成果や進行中の研究プロジェクトの精査をなされることもなく、一方的に解雇を告げられる。そんな「雇い止め」が、全国各地の大学や研究機関で起きている。いわば研究者の「使い捨て」である。日本の研究力低下の要因の1つと指摘される深刻な問題だ。

本連載では、科学や科学技術のリアルな姿を通して今の時代を読み解いていく

訴訟に発展したケースも少なくないが、その1つ、理化学研究所(本部・埼玉県和光市)を相手に、男性研究者Aさん(65)が地位確認を求めて起こした訴訟について、東京高裁でこのほど和解が成立した。

10月24日に東京都内で記者会見したAさんや弁護団によると、研究室がなくなるなど裁判で求めていた地位確認が実質的に難しくなったことを踏まえ、裁判所の提案を受け入れたという。

理研の研究者は約1800人いるが、Aさんによると、そのうち7割ほどは任期制だという。Aさんは「任期制研究者が理研のポテンシャルを支えているのに、理研は無期雇用に転換させたくないという理由だけで大量解雇に踏み切り、研究力の低下を招いた」と訴えた。

国際的に定評のある欧州系の学術出版社「シュプリンガー・ネイチャー」による大学や研究機関の国際ランキングで、2010年代は70位前後で推移していた理研の順位は、23年以降、100位以下に後退している。

あとで述べるように、雇い止めの根本原因は解決していない。日本の研究基盤をこれ以上衰えさせないためにも、研究者の雇用の安定化を早急に検討するべきだ。

次ページ23年3月末に380人が雇い止めに
関連記事
トピックボードAD