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ノーベル化学賞・北川教授が開発「気体を貯蔵できる金属有機構造体=MOF」のすごさ。世界各国で実用化の研究が進む 

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2025年のノーベル化学賞の受賞者に決定した京都大学の北川進特別教授 (写真:時事)
科学や科学技術は、その時々の社会や政治、経済の影響を直接受けることもあれば、社会に変革(時には事件や事故)をもたらすこともある。本連載では、そのリアルな姿を通して今の時代を読み解いていく。

まるでアナゴが狭い筒の中に自ら入っていくように、規則正しく並んだナノサイズの無数の穴に、狙った気体分子や高分子が入っていく――。

京都大学の北川進特別教授が1997年に開発したのは、そんな不思議な性質を持つ多孔性材料だった。

本連載では、科学や科学技術のリアルな姿を通して今の時代を読み解いていく

筆者は3年前、北川さんにインタビューする機会があり、ノーベル化学賞の受賞理由となった多孔性材料「MOF(モフ)」について、開発の経緯からその後の研究の進展、産業化の状況に至るまでをじっくり聞いた。アナゴはその時、北川さんが使ったたとえだ。

MOFとは「Metal-Organic Framework(金属有機構造体)」の頭文字を取った呼び名で、北川さん自身は開発当時、「Porous Coordination Polymer:PCP(多孔性配位高分子)」と名付けているが、英語圏ではMOFと呼ばれることのほうが多い。

内部に無数の穴、1グラムの表面積はサッカー場と同じ

産業化の現状について語る前に、まずはMOFがどんな材料で何が「すごい」のかを紹介しよう。

MOFとは、簡単に言えばいろいろな種類の有機分子(炭素を含む化合物)を組み合わせて作った材料だ。構造はジャングルジム型、ハニカム型などさまざまなタイプがある。骨組み部分は有機分子だが、節の部分はプラスの電荷を持つ金属イオンでできていて、有機分子同士をつなげる接着剤の役割を果たしている。

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