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広島電鉄とJR西日本がデザインを「相互交換」したラッピング列車が誕生、車両デザイン第一人者が強調する「トータルデザイン」の大切さ

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広島電鉄の5100形「グリーンムーバーマックス」にJR西日本の「RedWing」のデザインがあしらわれたラッピング列車(写真:JR西日本)
会社を動かすのは現場のビジネスパーソンだ。人気商品やサービスが生まれた背景、新たな挑戦の狙いとは。本連載では、その仕掛け人を直撃する。 

 

「間もなく発車します」。アナウンスとともに、広島電鉄の広島駅停留所(広島駅)から発車した5100形「グリーンムーバーマックス」は、通常とは異なる様相を呈していた。車両の前面にはJR西日本が広島エリアの路線で走らせる車両「RedWing(レッドウィング)」の文字が配され、側面には特徴的な赤いラインが入っている。

これは広島電鉄とJR西日本による「ラッピングコラボトレイン」として運行されている電車だ。広島電鉄とJR西日本が連携し、広島駅新駅ビルの開業(2025年3月)や、路面電車が新駅ビルの2階に乗り入れる「駅前大橋ルート」の開業(25年8月)と連動するような形で、地域住民や観光客などの期待感を一層高めることを目的として、24年9月から実施されているものだ。

車両デザインを相互に入れ替え

広島電鉄の5100形(グリーンムーバーマックス)と、JR西日本の227系(レッドウィング)の車両デザインを相互に入れ替え、フルラッピングで再現したコラボレーション列車として運行されている。

このラッピング列車をデザインしたのが、JR西日本において「車両デザインの第一人者」とされ、現在JR西日本のグループ企業、関西工機整備の取締役を務める大森正樹氏である。

同氏は千葉大学工学部工業意匠科を卒業後、1989年にJR西日本に入社。鉄道設計技士として、数多くの車両の設計・デザインに携わった。特急「サンダーバード」のリニューアル、レッドウィングのデザイン、新型車両などを投入した「大阪環状線改造プロジェクト」、そして寝台列車「トワイライトエクスプレス瑞風」の車両設計など、多岐にわたる領域で実績を残している。

関西工機整備の大森正樹取締役。1989年にJR西日本に入社後、鉄道設計技士として、数多くの車両の設計・デザインに携わった。JR西日本テクノスの技術部長を経て関西工機に出向。熱烈な阪神タイガースファンで知られる(記者撮影)

大森氏は鉄道のデザインについて、「車両は(駅や街などと連動して)トータルにデザインすることが大事」と語る。「自動車や家電メーカーが商品の何かしらの価値を高めるためにデザインを使いこなしているのに対し、日本の鉄道については長らく、デザインの活用に無関心だった。しかし、ロンドンの地下鉄が1930年代に、路線図やフォント、ポスターを共通化し、トータルデザインを実践してきたように、国内の鉄道においてもトータルでのデザインが不可欠だ」(大森氏)。

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