運転コスト低減やCO2回収で好成績の「石炭ガス化複合発電」。商用化にはCO2貯留場所の確保など課題も

広島県竹原市の竹原港からフェリーに乗っておよそ30分、大崎上島(広島県大崎上島町)の玄関口に当たる白水港に到着する。そこから車で10分ほど走り、橋をわたった先の小さな島に「大崎クールジェン」はある。J-POWERと中国電力の合弁会社が運営する次世代型の火力発電施設(出力16.6万キロワット)だ。
このIGCCと呼ばれる新たな発電方式が、大手発電企業JERAなどが進めるアンモニア混焼火力発電と並んで、石炭火力発電の脱炭素化の有力な選択肢としてエネルギー関係者の間で注目されている。
「(アンモニア火力などに)加えて既存火力への追設等を念頭に、脱炭素化を見据え、石炭ガス化複合発電(IGCC)等の次世代の高効率火力発電技術の開発を推進する」
2025年2月に閣議決定された第7次エネルギー基本計画で、IGCCの開発推進についてこう明記された。石炭を使い続けながら、発生した二酸化炭素(CO2)を回収・貯留することで脱炭素化を進めようという取り組みだ。
CO2回収で効率的な仕組み
水素や、水素と窒素の化合物であるアンモニアは、燃焼時にCO2が発生しない。そのため、火力発電を続けながら脱炭素化を実現する方策として研究開発が進められてきた。ただし、石炭や天然ガスを水素やアンモニアの原料とする場合、水素やアンモニアの製造過程で発生したCO2を取り除き、環境中に排出しないような手だてが必要だ。
大崎クールジェンでは、次のような手順で発電やCO2の分離回収をしている。(下図参照)

① ガス化炉と呼ばれる設備に石炭と少量の酸素を投入。加熱して蒸し焼きにすることで、一酸化炭素(CO)と水素を主成分とする石炭ガスを精製。
② 石炭ガスの一部を取り出し、「COシフト反応器」により高圧下で水蒸気を用いてCOをCO2に変換。
③ CO2吸収塔でCO2を分離回収して、水素を主成分とするガスに転換。
④ ガスタービン燃焼機で、水素を主成分とするガスを燃焼させて発電する。
⑤ 燃焼後の高温の排ガスを廃熱回収ボイラーに送り、発生させた蒸気をもとに蒸気タービンを駆動させる。
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