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〈燃料アンモニア商用化〉船舶や石炭火力発電の実証試験で成果。製造コスト低減やサプライチェーン構築が課題に

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商用利用を前提とした世界初のアンモニア燃料タグボート「魁(さきがけ)」。3カ月の実証航海で高い安全性や環境性能を証明した(撮影:筆者)
水素化合物であるアンモニアは、燃焼時に温室効果ガスである二酸化炭素(CO2)を排出しない次世代燃料の有力な選択肢として注目されている。船舶燃料や火力発電分野における脱炭素化の切り札になるのか、その可能性と課題を探った。

2024年から2025年にかけて、燃料アンモニアの商用化に向けていくつかの大きな進展があった。

その1つが船舶分野だ。日本郵船などが進めている次世代船舶の開発プロジェクトで、アンモニアを燃料とするタグボートによる実証航海が2024年8月から11月にかけて実施された。新たに開発したエンジンによりトラブルもなく航海できたうえ、目標を上回る温室効果ガスの大幅な削減も実現。これを受けて2025年3月28日、横浜港で「プロジェクト完了記念式典」および記者会見が開催された。

温室効果ガス9割以上を削減

アンモニアを燃料とするタグボートの開発を目指す実証事業は、政府が創設した「グリーンイノベーション基金事業」における「次世代船舶の開発」分野で2021年10月に採択された。それから3年弱をかけて、船の基本設計承認取得、エンジン実機による燃焼試験成功、既存のLNG(液化天然ガス)船からの改造工事といった過程を経て、2024年8月にアンモニア燃料焚きのタグボートが竣工した。

国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)がグリーンイノベーション基金を通じて開発資金を支援。船の設計および既存の船からの改造を日本郵船グループの京浜ドックが担い、エンジンの主機をIHI原動機が開発。日本郵船を船主とするといった体制で、開発が進められた。アンモニア燃料焚きの商用船としては世界で初めてといい、その取り組みに国内外から注目が集まっていた。

記者会見に臨んだ曽我貴也・日本郵船社長は、「今回のプロジェクトの社会的意義としていちばん大きかったのは、船舶燃料としてのアンモニアの可能性を実際に確認できたことだ」と語った。「トータルの消費燃料におけるアンモニア混焼率および従来の燃料と比較しての温室効果ガス削減率はいずれも9割以上を達成。温室効果ガス排出ゼロに近づくことができた」(曽我社長)という。

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