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期待が強まる国産レアアース。南鳥島沖に眠るレアアース泥の開発は「中国依存」脱却の切り札になりうるが、壁は高い

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地球深部探査船「ちきゅう」(写真/内閣府戦略的イノベーション創造プログラム、海洋研究開発機構)

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米中対立の大きな火種になっているレアアース。中国の輸出規制に激怒したアメリカ・トランプ大統領は100%の追加関税を課すと脅した。日本の産業界も、レアアース調達の不安定化に戦々恐々だ。何が起きているのか、どういう対策が取れるのか、前線を追った。

国産レアアース開発への期待が強まっている。日本の排他的経済水域(EEZ)内に、埋蔵量世界3位となる約1600万トンのレアアースが眠っているとされるのが日本最東端の南鳥島(東京都)周辺の海底だ。2013年、海洋研究開発機構(JAMSTEC)や東京大学などの共同調査で、水深6000㍍の深海にレアアースを高濃度で含む「レアアース泥」が発見されたのがきっかけだ。

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南鳥島レアアース泥の研究開発を主導してきたのは内閣府戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)。今年6月にはSIPの委託を受け、JAMSTECが3週間にわたる現地調査を実施した。国産レアアースに熱視線が注がれるのは、レアアース中国依存度を下げる切り札になる可能性があるからだ。

日本のレアアース調達は中国に大きく依存している。そのリスクが顕在化したのが2010年のレアアースショックだった。中国商務部が日本向けレアアースの量を前年の5万トンから3万トンに減らすと発表し、その直後には尖閣諸島沖で中国漁船と海上保安庁の巡視船が衝突する事故が発生、中国人船長が逮捕された。この報復として中国はレアアース輸出をさらに絞る。日本の産業界はパニックに陥った。

海底レアアースが見つかった南鳥島沖

下がらない中国依存度

当時のレアアースショックを教訓に、日本政府や産業界は中国依存度を下げようとさまざまな策を講じてきた。供給途絶に備えて備蓄量を増やすことや、リサイクル、さらには他国における鉱山開発プロジェクトへの投資にも乗り出した。

11年、商社大手の双日と独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)は共同出資で日豪レアアース株式会社(JARE)を設立し、同社を通じて豪州ライナス社に約200億円を出資。最大9000トン、日本国内需要の3割を満たす軽希土のレアアース供給に見通しをつけた。

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