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中国のレアアース「武器化」に翻弄される世界。15年前のレアアースショックを「教訓」としてきた日本だが、中国依存からの脱却は難しい

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レアアースを武器化する中国に、世界は翻弄されている。果たして対応できるのか

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米中対立の大きな火種になっているレアアース。中国の輸出規制に激怒したアメリカ・トランプ大統領は100%の追加関税を課すと脅した。日本の産業界も、レアアース調達の不安定化に戦々恐々だ。何が起きているのか、どういう対策が取れるのか、前線を追った。

中国による相次ぐレアアース輸出規制に世界が翻弄されている。この半年間、世界各国が15年前に日本で起きたレアアースショックに注目した。輸出規制の影響を最も受けたのが日本で、現在起きている状況への教訓があると考えたからだ。

2025年10月9日、中国商務省はレアアースの輸出管理を強化する新たな規制案を発表した。採掘や製錬、磁石材料の製造などの技術の輸出には中国当局の許可を取得する必要を義務付けた。また、外国企業などが、中国産レアアースを0.1%以上含む製品を輸出する際に許可証の取得が必要とした。最終用途に軍事目的が含まれる場合は原則として許可しないとする。商務省はレアアース関連製品は軍民両用(デュアルユース)属性をもつために、規制は国際慣行に沿ったものだと説明する。

中国はこの半年近くの間にレアアースの輸出規制を強化し続けている。4月には、アメリカによる相互関税への報復としてレアアース7種の輸出に制限をかけ、8月には採掘や製錬、出荷などのサプライチェーン情報を追跡できる制度を立ち上げていた。

G7が「結束して対応」

中国の新たなレアアース輸出規制強化に、アメリカのベッセント商務長官は10月15日、「北京の官僚が自国以外の世界に広がるサプライチェーンや製造過程を管理することがあってなるものか」と怒りを露わにした。

レアアースはPC、スマートフォンなどの電子機器から電気自動車、医療機器、生成AI用途のデータセンター、ミサイルなど兵器に至るまで、産業のありとあらゆる場所で使われる、現代社会には不可欠な物資だ。アメリカをはじめ各国の政府や専門家は、中国がレアアースを含むすべての製品に許可申請を義務付け、国際社会に影響力を行使しようとしているのではないかと懸念する。アメリカ通商代表部(USTR)のグリア代表は「グローバルサプライチェーン支配の企てだ」と強く中国を非難する。

10月中旬にワシントンで開かれた国際通貨基金(IMF)・世界銀行の年次総会では、主要7カ国(G7)の財務相が中国の規制強化に対して議論を行った。加藤勝信財務相は「G7は中国に対し、結束して対応していくべき」と呼びかけ、EUの欧州委員会で経済担当の委員を務めるドムブロフスキス氏もロイター通信の取材に、輸出規制に対して結束して、短期的な対応で連携することでG7が合意したと伝えた。

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