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レアアースのみならず製錬技術にも輸出規制をかけた中国。企業はサプライチェーンリスクの把握と対策にコスト負担を

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中国のレアアース生産地、内モンゴルの包頭市
レアアースの生産地として知られる中国・内モンゴル自治区の包頭市(写真:The New York Times)

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米中対立の大きな火種になっているレアアース。中国の輸出規制に激怒したアメリカ・トランプ大統領は100%の追加関税を課すと脅した。日本の産業界も、レアアース調達の不安定化に戦々恐々としている。
レアアースなど資源の調達リスクに国や企業はどう備えればいいのか。米中の思惑や今後の市場の見通しについて、マーケット・リスク・アドバイザリーの新村直弘・共同代表に話を聞いた。
――中国が10月9日にレアアースに関して新しい規制を発表したことに激怒し、トランプ米大統領は中国に100%の追加関税をかけると言い出しました。レアアースをめぐる米中間の対立は今後どういう展開となるでしょうか。
 APEC(アジア太平洋経済協力会議)で米中首脳会談が行われ、そこで折り合うというのが基本的な見方だ。米中双方にとって今の応酬は互いにメリットが大きくない。
 中国経済は個人消費が回復せず落ち込んだままだ。アメリカから100%の追加関税をかけられることは避けたい。また、アメリカで産出されたレアアース鉱石が中国で精製され消費されている。アメリカ産レアアースがなければ中国でも供給不足が生じる可能性があり、レアアースカードは実はアメリカも持っている。脱アメリカは容易ではないと中国はわかっている。
 アメリカも、追加関税100%というのは振り上げた拳を下ろすための場所をつくるのが目的の数字だ。これまでのトランプ関税でも、最初に高い数値が掲げられ、後に多くの国で20%など低い関税率に下げられた。下げられたといっても、関税措置導入前より税率は高いわけで、アメリカは関税導入という目的は達成できている。
 アメリカの動向を見るうえで関税以外に今回のポイントとなるのは、アメリカ産大豆だ。中国はアメリカ産大豆の輸入を大幅に減らし、トランプ氏はそれに対しての報復も示唆した。アメリカ南部の農家は共和党にとって重要な支持者たちで、これは中間選挙を見据えた動きだ。
 すでにアメリカ環境保護局はバイオマス由来ディーゼル燃料の生産量を引き上げる提案をしており、実現すれば大豆の需要量が増え、対中輸出減の弱み対策になる。中間選挙に向けてトランプ氏が尻込みしている状況で、中国がさらにトランプ氏の弱みに付け込んだり、譲歩したりするかも、レアアースに関する規制の強弱に影響しかねない。
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