
アメリカ・トランプ政権による傍若無人で自国本位の政策が、深海底での資源採掘に関する国際秩序を根底から脅かしている。
トランプ大統領は今年4月24日、「アメリカの沖合にある重要な鉱物資源の活用」と題した大統領令に署名。大陸棚の外側に広がる深海底での鉱物資源開発にゴーサインを出した。これに、米ナスダックに上場する、カナダのベンチャー企業の「ザ・メタルズ・カンパニー」(TMC社)が呼応し、わずか5日後の4月29日、米子会社を通じて商業採掘許可を米海洋大気局(NOAA)に申請した。
深海底及びそこに眠る資源は、「国連海洋法条約」第136条により「人類の共通の財産」と定められている。特定の国がルールを無視して、勝手に採掘することはできない。
しかし、アメリカは同条約に加盟しておらず、世界の多くの国が参加する国際海底機構(ISA)のメンバーではない。そうした中での突然の大統領令や採掘許可申請が、海洋をめぐる世界秩序に深刻な問題を引き起こしている。
アメリカ大統領令が引き金
TMC社のジェラルド・バロン最高経営責任者(CEO)は「アメリカ政府からライセンスを取得すれば、商業採掘を進めるのか」との東洋経済の質問に対して「そのとおりだ」と回答している。「われわれの決定はすでに下されている」とバロン氏は断言した。

ここで問題となるのが、国連海洋法条約をはじめとする国際ルールとの整合性だ。「国際法や国際条約を考慮した場合の商業採掘の合法性についてどう考えるのか」との東洋経済の質問に対して、バロン氏は「アメリカの行動は合法だ。条約は、それに同意しない国には適用されない」と言い切った。国際ルールの抜け穴を利用することで、同社が悲願としてきた深海での商業採掘の道を切り開こうとしている。
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