東京が「中華圏の文化的ハブ」になりつつある背景。華語ノンフィクション作家のイベントから独立系書店、中国語書籍の出版社まで
会場のあまりの熱気に、何人もの通行人が目を奪われていた。目線の先は、東京・芝浦にある5階建てのコミュニティースペースを貸し切って2025年12月20日から2日間にわたり開催された、華語ノンフィクション作家によるイベントだ。
「DAMN TRUE FESTIVAL」(中国語では「真的故事節」)と銘打って開かれたイベント、日本語ならば「ガチ実話フェス」あたりになるだろうか。中国大陸、香港、台湾をはじめ、世界各地から出版関係者、作家、ドキュメンタリー監督、ポッドキャスター(音声番組の配信者)、漫画家、ダンサー、ミュージシャンなど多くのゲストが駆けつけた。
単日の入場券が6000円、2日間の入場券が最高1万3500円と比較的高額だったにもかかわらず、開催3週間前には売り切れるほどの人気ぶり。来場客の4割ほどは海外からだったとのことだ。昨今、中国政府が訪日旅行の自粛を呼びかけているが、政府機関や大学など公的なバックグラウンドを持たないフリーランスの人も多かったためか、ほとんど影響は感じられない。
上野千鶴子氏の著書が中華圏でベストセラーに
筆者がまず足を運んだ5階のメイン会場では、「華語ノンフィクション界の現状」というテーマのセッションが、時折笑いが起きるようなくだけた雰囲気の中進行していた。60~70人ほどが参加する盛況ぶりで、立ち見が出るほどだった。
1階では、よりカジュアルで小規模なワークショップなどが開かれ、2階では中華圏各地に拠点を置く出版社などが自社を紹介するブースが設けられていた。
スローガンは「ストーリーを聞き、話者に会う。創作が理解を生むスペース」だ。会場の片隅に置かれたメッセージボードには、「華語創作のさらなる可能性を見ました。地域や身分などの違いを超えて、この瞬間われわれは皆、創作者です」といったコメントが書かれていた。
1日目の締めくくりは、社会学者の上野千鶴子・東京大学名誉教授による基調講演。著書が中華圏で次々とベストセラーとなっており、100人超の聴衆が集結した。上野氏は、日本でフェミニストや高齢者といった当事者がどのように声を上げていったのかを力説し、多くの聴衆が聞き入っていた。
質疑応答の時間に筆者が、「なぜ中華圏で読まれていると思うか」と尋ねると、上野氏は東アジアにおける都市部の高学歴の女性たちは同じ問題を抱えているため、読まれているのではないかと回答。その上で、「私はずっと代弁者として(こうした場に)呼ばれている。あなたたちの中から代弁者ではなく、中国のジェンダー研究を自ら行う人たちが生まれてきてほしい。その人たちの声を聞きたいと心から願っている」と付け加えた。




















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