
この数年、「台湾有事」に関する報道や議論が増えて、台湾への関心とともに懸念も広がっている。
台湾に駐在員して赴任する人や旅行する人に、「大丈夫か?」「危なくないか?」と声をかける人も出てきた。中には悪ふざけや冗談半分でウケを狙っていう人もおり、筆者もそういう話を台湾在住の日本人から聞かされることが増えた。
ネット上でも「中国がいつ台湾を攻撃するか」などと危機感だけを煽るコメントが溢れている。これらに影響を受けて、台湾旅行に行く人にネガティブな反応を示す人や旅行計画する人が実際にとりやめるなどのケースも聞くようになった。
台湾を避けるのは中国の思うつぼ
台湾や東アジア情勢に関心をもつことは、日本がどのように備えていくかを国民全体で考えて議論するうえで重要なことだ。しかし、深く考えずに台湾を避けようとする言動は中国の思うつぼである。それを知らないでいること自体がリスクだ。そこで台湾有事に関して、日本人としてすべきこととすべきでないことを以下にまとめた。
筆者は2024年8月から台湾の清華大学で教職に就き、台湾の学生に台湾政治や中台関係を中国語で教えている。大教室の講義と別に少人数のゼミも開講しており、学生らの議論を聞いて新たな発見も多い。
大学がある新竹市は台北から高速バスで1時間10分ほどの場所にあり、日本でも有名になった半導体大手のTSMCの本社がある。ハイテク産業の一大拠点で日本企業とのパイプも太く、日系企業の関係者と話す機会も増えた。一番の話題はやはり「台湾有事」だ。
日本企業の危機管理部門は、主に地震や津波などの自然災害、風評被害、金融市場の動揺、不祥事対応などで対策に取り組んでいる。そして近年は地政学リスクへの対応も重要になっているようで、実際に有事リスクへの対応として、自然災害などへの備えの一環として邦人社員の退避マニュアルを作成している企業も出てきた。
しかし、自然災害と同列のように扱う議論の方向には違和感を覚える。株主や機関投資家から「何も対策していないのか?」と聞かれたら困るという意識で動いている企業もあるようだ。
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