有料会員限定

対中国で大転換したトランプ関税、米中「緊張緩和」の裏で32%の関税を迫られた台湾が苦悩する4つの不透明性

✎ 1〜 ✎ 76 ✎ 77 ✎ 78 ✎ 79
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

有料会員限定記事の印刷ページの表示は、有料会員登録が必要です。

はこちら

はこちら

縮小
エアフォースワンから降機するトランプ大統領
対中関税を引き下げ、急転直下の「緊張緩和」に動いたトランプ大統領(Haiyun Jiang/The New York Times)

特集「緊迫 台湾情勢」の他の記事を読む

※本記事は2025年5月17日8:00まで無料会員は全文をご覧いただけます。それ以降は有料会員限定となります。

第2次トランプ政権発足以降、苛烈さを増していた米中の制裁・報復合戦は、5月11日に「一時停戦」となった。アメリカのベッセント財務長官と中国の何立峰副総理がスイスで会談し、「緊張緩和」で合意したからだ。

第2次トランプ政権は発足以降、一部の例外を除き全中国製品に対する追加関税率を累計145%にまで引き上げ、中国側も報復措置としてアメリカ産大豆・鶏肉・大型自動車など個別品目に対して10~15%の追加関税を課したほか、それとは別に全アメリカ製品を対象に累計125%の追加関税を課していた。しかし、今回の合意で、アメリカ側は累計関税率を145%から30%に、中国側は125%から10%に引き下げることにした。

むろん第2次トランプ政権の発足前と比べれば中国製品に対する関税率は30%も高くなっている。また、90日間の期間を設け、交渉の行方によっては米中ともに関税率を24%ポイント引き上げられることにもなっている。さらに言えば、第2次トランプ政権発足前に発動された米中双方の追加関税は今回引き下げの対象とはならなかった。

米中の「緊張緩和」を台湾市場も歓迎

とはいえ、米中という二大経済大国間の大幅な関税引き下げを世界の金融市場は歓迎した。状況は台湾でも同じだった。台湾の代表的な株価指数である加権指数は米中貿易協議前の5月8日から5月13日の間に3.8%上昇した。

台湾にとってアメリカ、中国はそれぞれ1位、2位の輸出先である。また、中国を対米輸出拠点としている台湾企業も多い。それゆえ、今回の米中合意が台湾の株価や当面の経済成長にとって好材料視されるのは当然だろう。

また、真偽は別として、相互関税による経済への悪影響を恐れるトランプ政権が、中国以外の国・地域とも交渉の妥結を急ぎ、関税の引き下げに動くのではないかといった期待も株価上昇に一役買った可能性がある。

確かにそうした期待を抱きたくなるほど、台湾もトランプ政権の関税政策に翻弄されてきた。アメリカ時間4月2日にトランプ大統領が発表した相互関税は次の3つの点で台湾にとっても衝撃だったのだ。

第1に、台湾に適用された相互関税率が32%と高かった点である。32%という関税率は、相互関税率表に載せられた57の国・地域の中でも高い部類に入る。しかも、輸出製品が似ている日本(24%)、韓国(25%)よりも台湾の相互関税率は高かった。

次ページはこちら
関連記事
トピックボードAD