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冨山和彦氏「経営者の仕事は企業をしっかり成長させること。"自社株買い"が増えてきたが、2026年はそれしかできないような経営者は失格だ」

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冨山 和彦(とやま・かずひこ)/日本共創プラットフォーム(JPiX)会長。1960年生まれ。経営コンサルタント。東京大学卒業。在学中に司法試験合格。スタンフォード大学でMBA取得。産業再生機構COOを経て、2007年に経営共創基盤(IGPI)、20年JPiXを設立(撮影:梅谷秀司)

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2026年における企業ガバナンスにおける論点を日本取締役協会会長の冨山和彦氏に聞いた。

ーー上場企業による自社株取得・消却が増えています。この問題点を指摘していますね。

ガバナンス改革の進展とともに日本の企業の「稼ぐ力」は確かに向上した。しかし、その増えた利益やキャッシュが、未来への成長投資ではなく、安易な自社株買いに過度に使われている点は大きな問題だ。

もちろん、企業が莫大な利益を上げ、必要な投資をすべて行ってもなお資金が有り余っているという状況(たとえばアメリカのアップルのような)であれば、株主還元としての自社株買いも理解できる。しかし、多くの日本企業は、そこまで稼げているわけではない。その程度の稼ぎで得た貴重なキャッシュを自社株買いに振り向けてしまえば、本来行うべき設備投資や事業の再構築に資金が回らなくなってしまう。

「成長投資」が問われる年に

アクティビスト(物言う株主)からの圧力も背景にあるだろう。彼らは手っ取り早く株価を上げるために「金があるなら配当しろ、自社株買いしろ」と要求する。しかし、経営者や社外取締役がその圧力に屈し、短期的な株価対策に走ることは、企業の長期的な成長機会を逸することに他ならない。

たとえばパナソニックが着手したように、儲かっていない事業から撤退するための早期退職費用などに資金を使った方が、将来のNPV(正味現在価値)に対してポジティブな影響を与える 。稼いだ資金を未来への「投資」に向けず、単に「自社株買い」という形で消費してしまうこと。それが日本企業の持続的成長を妨げている根本的な問題の一つだ。

26年は、「どれだけ成長投資を行っているか」が問われる年にならないといけない。

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