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〈燃料アンモニア商用化〉船舶や石炭火力発電の実証試験で成果。製造コスト低減やサプライチェーン構築が課題に

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ここで注目されるのが、アンモニアを燃料とするエンジン開発の難しさだ。アンモニアは強い刺激臭のある有毒物質で、環境中に漏れ出さないように厳重に取り扱う必要がある。そのため、技術の中核となる主機エンジンの開発が課題となった。

IHI原動機の村角敬社長(当時、4月1日付で退任)は、「とくに漏洩対策には検討に検討を重ねた」と説明した。アンモニア燃料が通過する配管は二重化し、万一、内側の管で漏洩があったとしても外側の管で封じ込め、環境中に漏れないような設計にした。また、エンジン内部の圧力を大気中よりも低く保つことで、外部への漏洩を防止する仕組みとした。

IHI原動機が開発した、アンモニア燃料タグボート向け主機関(提供:IHI原動機)

海運会社である日本郵船が船の開発に関与することで、操船のしやすさの向上やリスクの低減に寄与した。日本郵船の横山勉執行役員によれば、「当社グループのエンジニアが集まってリスクアセスメントをし、数百にもわたる危険因子を特定した」という。「アンモニアは毒性が高いものの、リスクを抽出して対策を講じることでリスクコントロールは可能だという結論になった」(横山氏)。

実際、タグボートの船内に立ち入ってみると、アンモニア漏洩対策の厳重さがわかった。船内の32カ所にセンサーを設置してアンモニアの濃度を測定。至る所に設けられたモニター画面を通じて船内に異常がないかを確認している。

アンモニア燃料焚きの船は世界でも例がないため、安全に関するルール作りは途上だ。今回の技術開発に際しては、日本海事協会が安全性の評価を実施。エンジンに関して型式承認を発行した。

また、開発で得られた知見を基に、アンモニア燃料船の安全要件(ガイドライン)を公表した。安全要件の案については、世界に先駆けて日本から国際海事機関(IMO)に提案し、国際的なルールの策定につなげようとしている。

JERA、三井物産が製造設備の投資決定

燃料アンモニアをめぐるもう1つの進展が、石炭火力発電所での燃料アンモニアの混焼試験およびその実績を踏まえた、アメリカでのアンモニア製造設備への投資決定だ。

日本最大の火力発電企業JERAとプラント大手のIHIは、JERAの碧南火力発電所(愛知県碧南市)で石炭とアンモニアの混焼試験を2024年4月から6月にかけて実施。石炭に対しての20%のアンモニア混焼についてIHIによれば、「社会実装に向けて大きな課題は認められず、良好な結果が確認できた」。アンモニア20%の混焼により、CO2排出量も約20%の削減を確認したという。

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