【独自】三菱重、JMUの新イージス搭載艦、2隻の総コストは21年試算0.9兆円から25年1.9兆円に膨張。それでも収まらず前代未聞の2兆円超えへ

今年4月18日。中谷元・防衛相が記者会見で、ある新型護衛艦のコストについて説明を行った。「2隻で総額約1.9兆円、1隻当たり9700億円と見積もっている」。
この船は「イージス・システム搭載艦」と呼ばれる。2020年に配備計画が中止となった陸上配備型イージス・システム「イージス・アショア」(陸上イージス)の代替となる船だ。そして、自衛隊史上、飛び抜けて高コストとなることが確実視される船でもある。
政府は計2隻を導入。三菱重工業、ジャパン マリンユナイテッド(JMU)と1隻ずつ建造契約を結び、三菱重工建造の1番艦が27年度に、JMU建造の2番艦が28年度に就役する予定だ。
船体規模は基準排水量約1万2000トンで、既存のイージス艦の1.5倍にもなる。アメリカのイージス艦にもこれほど大きなものはない。
「日本にしかないガラパゴス艦」「負の遺産になりかねない」――。そんな懸念が自衛隊内外でくすぶるこの船は、なぜ巨額を投じて導入されることになったのか。ここに至るまでには、政治、防衛官僚、制服組自衛官らの思惑が複雑に絡まり合う紆余曲折があった。
データ間違い、職員居眠り…ずさんさが招いた軌道修正
政府が陸上イージス導入を閣議決定したのは今から約8年前の17年末。背景として北朝鮮のミサイルによる脅威が高まっていた時期だ。

日本のミサイル防衛では、敵のミサイルを高高度の段階でイージス艦からの迎撃ミサイル(SM3)で狙う。外した場合は地上の地対空誘導弾PAC3が低高度で撃ち落とす。つまり2段構えの態勢になっている。
核弾頭も搭載可能な北朝鮮のミサイルには、移動式の発射台が使われ、いつ、どこから発射されるかつかみにくくなっている。そのため日本のイージス艦は常時警戒しているが、定期整備や訓練は避けられず、警戒に就ける日数は限られる。気象・海象の影響を受けることもある。
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