
――オーストラリア政府が次期フリゲート艦に三菱重工業の「もがみ」型護衛艦の能力向上型を選定しました。どんな意味がありますか。
3つある。1つ目は防衛産業が本当の意味での産業になるということだ。これまでの防衛産業は、発注された隊員の制服を毎年決まった数量自衛隊に納める、というような業種だった。艦船を納めるのも、それが大きくなったようなものだ。しかしこれからは海外市場も戦略的に視野に入れ、成長を見込める世界になる。
おっかなびっくりだった10年前
私が旧民主党政権で野田佳彦首相の補佐官を務めていたとき、当時の民主党内でも侃々諤々(かんかんがくがく)議論し、武器輸出三原則を緩和して国際共同生産に道を開く藤村修官房長官談話を出した。これが現在の防衛装備品海外移転の枠組みにつながっている。市場が国内に限られていては、装備品の高性能化を実現しつつコストの高騰に対応することはできず、結果的に税金の無駄遣いになる。今回、国際共同開発・生産で結果を出せたことは感慨深い。これが2つ目だ。
3つ目は、2016年に潜水艦を売り込もうとして失敗したオーストラリアでリベンジができたことだ。当時ネックとなった問題をほぼ克服したことで選定に至ったのは意義深い。
――何を克服したのでしょうか。
16年当時に負けたフランスには何十年もの武器輸出の歴史と経験があった。一方、日本は政府も企業もおっかなびっくりだった。どこまで踏み込んでいいかわからず積極性に欠け、先方への情報提供や説明が不明確だった。今回は三菱重工の泉澤(清次)会長が先頭に立ち、防衛装備庁長官と一緒に首都キャンベラまで行ってプレゼンテーションした。10年前には考えられなかったことだ。豪企業への技術移転や協業をどうするか、現地の雇用の創出、保守やサポート体制をどうするかの見通しを立て、オーストラリアの政治情勢への配慮もした。
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