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ウクライナ戦争がもたらした軍事と民間企業の距離感の変化と、新たな企業リスクへの備えの必要性、そして次のイノベーションの可能性

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ロシアの侵攻直後、イーロンマスク氏率いるスペースX社はウクライナに衛星通信「スターリンク」を無償提供した(写真:Joe Raedle/Getty Images)
防衛費の拡大を背景に防衛市場が活況だ。関連企業の売り上げや利益は急伸し、株価は高騰している。現場でいま何が起きているのか。死角はないのか。特集「防衛産業の熱波 防衛費43兆円の狂騒」で最前線をリポートする。

軍隊は兵站から戦闘まで自給自足する自己完結型組織である。しかし武器や食料は部外から調達せざるをえず、輸送も業者に頼る場合が少なくない。この基本的な関係はギリシア・ローマ時代から変わっていない。

業者・商人と軍の関係は時代が下がると密になり、20世紀の総力戦では民間企業は完全に「戦力」に組み込まれる。第2次世界大戦が終わってもアメリカでは、軍と巨大防衛産業が装備品開発・調達をめぐって結び付きを強め「軍産複合体」の形成が指摘された。そして1980年代に始まった世界的な「行政民営化」の流れが89年の冷戦終結と相まって、戦争・軍隊と民間企業の関係に変化をもたらす。軍隊の民営化だ。警備・訓練・情報分野などの「非戦闘領域」がその対象となった。

ウクライナで見えた「戦う民間企業」

2022年に始まったロシアによるウクライナ侵攻では、企業が能動的に戦争に関わったという点で新しい傾向が見られた。象徴的なのが、侵攻直後にウクライナの要請を受け、アメリカのスペースX社が衛星通信「スターリンク」を無償提供した事例だ。侵攻の2日後、ウクライナのフェドロフ副首相兼デジタル転換相によるSNSを通じた要請を受け、ウクライナで衛星インターネットサービスを無償開放した。対応の素早さも含め、世界を驚かせた。ウ軍はこれをドローン偵察と砲兵の連携や通信傍受の翻訳・分析に役立てている。

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