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高市早苗政権による防衛政策強化が注目を集める中、著名投資家のピーター・ティール氏も出資するアメリカの防衛テック企業が日本へ本格進出した。AIを活用した安価な軍事ドローンや、自律型無人潜水機(AUV)などを製造するアンドゥリル・インダストリーズだ。12月3日にはパルマー・ラッキー共同創設者兼CEOが、東京都内で会見を開き、日本企業との協業に加えて、製品の開発や製造をする考えを明らかにした。パートナー企業の既存工場の活用や、新たな製造拠点設置を検討しているという。
ラッキー氏は10代で拡張現実(AR)ヘッドセットを開発し、その後フェイスブック(現メタ)に20億ドルで売却した人物だ。2017年に設立したアンドゥリルは、まず製品を開発してから販売するという、従来の防衛企業とは異なる販売方法(従来は開発・製造にかかったコストに一定の利益を上乗せする方式)で、アメリカの防衛市場に変化を起こしている。
会見では日本製の部品のみを使い、日本国内で製造したドローン「キズナ」も披露。セキュリティー上、部品などを中国製に依存しないことの重要性を力説し、「高度なAIを搭載したドローンを日本製100%で作れるのであれば、戦闘機や、地上・空中発射の巡航ミサイル、無人潜水艦、防空システムなども、100%日本製部品で作れる、ということの証明になる」(ラッキー氏)と訴えた。日本進出の真意はどこにあるのか。ラッキー氏に単独インタビューした。
――このタイミングで日本に拠点を構えるのは、高市政権が発足し、防衛予算が膨らんでいくことを見越したからですか。
政権が変わる前から日本進出は考えており、偶然こうなった。日本法人の設立についての話は、アンドゥリルを立ち上げた(2017年)頃までさかのぼらなければならない。その頃から日本のサプライヤーやパートナーと仕事をしていたし、自衛隊とも取引をしたいと考えていた。
従来と同じやり方をしている時間的余裕がない
とはいえ、単なる販売拠点ではなく、開発や製造の機能も構えられなければ意味がない。例えばオーストラリアでも、海軍向けに自律型無人潜水機(AUV)を製造できるようになるまでは正式な拠点を開設しなかった。日本でも同様に、リアルに作業ができるとわかってから開設しようと考えていた。
ここにきて自衛隊との取り組みが前に進んできたこと、新たな政権になったこともあって、日本の防衛産業に関わるサプライヤーが「従来のやり方をしている時間的余裕がない」と理解してきており、われわれの日本向けのプロジェクトが加速し始めている。