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防衛産業政策の大転換を設計した土本・元防衛装備庁長官に直撃。「まだ道半ばの50点」、輸出司令塔が必要な理由と、海外に売れそうな国産防衛装備

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土本英樹・元防衛装備庁長官は日本の防衛産業について「まだ50点だ」と採点する(撮影:尾形文繁)

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国が防衛予算を急拡大させた時期に防衛装備庁長官を務め、危機的状況だった防衛産業を立て直すための政策設計を指揮した土本英樹氏に、当時の状況と現状評価を聞いた。

――防衛装備庁長官だった頃の防衛関連企業の状況はどうでしたか。

私が防衛省の整備計画局長、装備庁長官だった2020年~23年前半は、日本の防衛産業は危機的状況だった。関連企業は社内外から理解を得られない苦しさを抱えていた。外部からは、破壊と紛争を生み出すというネガティブな印象を持たれ、株価は伸びない傾向にあった。社内では、収益性が低く社長を輩出するような部門ではないとも認識されていたようだ。

当時、プライム15といわれる防衛省と直接契約のある15社、例えば三菱重工業、川崎重工業、SUBARUなどだが、その防衛部門トップと長官として意見交換を行った。企業側からいちばん言われたのは「利益率を何とかしてくれ」ということだった。当時の発注制度では実質利益が2~3%しか出ず、事業撤退が相次いでいたからだ。

防衛産業への社会の評価が変わった

――22、23年の防衛政策の大転換は業況を好転させたように見えます。

まず、国としての考え方を明確にしたことが大きい。22年末に閣議決定した「防衛3文書」(国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画)で「防衛産業は防衛力そのもの」だと明記した。防衛装備のライフサイクルでは、研究開発から生産、維持整備、途中のグレードアップ、廃棄まですべて防衛産業が担う。つまり防衛産業なくして防衛力は成り立たない。

日本は、戦後、最も複雑で厳しい安全保障環境の下、地理的に中国、北朝鮮、ロシアに囲まれている。そしてロシアによるウクライナ侵攻が起きた。こうした状況の中、社会のサステナビリティーを支える不可欠な要素が防衛産業だというポジティブな評価も生まれつつある。もちろん国民の100%がそう考えることはありえないが、変化は大きい。

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