〈熱狂から悲観へ〉メタプラネット「株価がピーク比で8割下落」、ビットコイン爆買い企業が迎えた最初の試練

「材料あると信じてるから歯ぁ食いしばってんだよ」「『最後の絆』まで失ったら、私の応援し続けたメタプラが本当に終わってしまう」――SNSにはこんな嘆きの言葉があふれている。
声の主は、東証スタンダードに上場するメタプラネットの個人株主たちだ。メタプラネットの株価は今年6月に1930円の最高値をつけ、時価総額は1兆円に達した。しかし10月17日終値は402円と、最高値から8割近く下落し、時価総額も約4560億円と半減以下になっている。
もともとインディーズ系音楽CD卸や音源配信を祖業とするメタプラネットだが、2013年に参入したホテル運営が主な事業となっていた。それがコロナ禍で事業を縮小し、現在は暗号資産であるビットコインの購入・蓄積を行う「ビットコイントレジャリー企業」を標榜する。
企業価値向上のために目指すのが「1株当たり保有ビットコイン数の最大化」だ。
24年4月の購入開始以降、約4900億円を投じて3万枚を超えるビットコイン(直近価格で約5000億円相当)を保有するまでになった。「Bitcoin Treasuries.NET」のデータでは、上場企業におけるビットコイン保有枚数は世界4位の規模。日本企業では当然1位だ。
「mNAV」が1倍を下回った意味
個人株主たちの嘆きは、株価がピークから大幅下落したことだけが理由ではない。ビットコイン購入・蓄積企業で特有の指標となる「mNAV」(エムナブ)が初めて1倍を下回ったことにもある。
mNAVはmultiple of Net Asset Valueの略で、「株式時価総額+総負債」÷「ビットコイン純資産価値」で求められる。大まかに言うと1株当たり保有ビットコインの価値に対して株価が何倍で評価されているかを示す。株式投資家にはなじみ深いPBR(株価純資産倍率)のビットコイン版といったイメージだ。
mNAVの1倍割れは、保有しているビットコインの価値より時価総額が低いことを意味する。メタプラネットで資本調達戦略を推進する立場の奥野晋平IR・資本戦略ヘッドは、「ビットコイントレジャリー企業としての付加価値が評価されていない状態」だと現状を重く受け止める。
mNAV1倍割れは事業戦略をも揺るがす。ビットコイン購入原資調達の成否を占う指標でもあるからだ。
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