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オムロンの「介護の仕組みそのものを変える」ICTサービス、運営するのは工学/医学博士

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ハレクルWithの開発に携わった宮川さん(左)と加藤さん(右)。オムロンでは2024年に事業化された新興ビジネスだ(記者撮影)
会社を動かすのは現場のビジネスパーソンだ。人気商品やサービスが生まれた背景、新たな挑戦の狙いとは。本連載では、その仕掛け人を直撃する。 

 

オムロンは2024年9月、自治体の高齢者自立支援サービスをサポートするICT(情報通信技術)を発表した。「健康寿命の延伸のために何ができるか」をテーマとした社内研修で生まれたアイデアを、約6年間で事業化にこぎ着けた。工学の博士号を持つ加藤雄樹さん(37歳)と、医学博士号を持つ宮川健さん(45歳)が中心となり取り組む。

2018年、加藤さんはグループ会社の社内研修で高齢者の自立支援事業を提案するも、当時は見送りとなった。だが翌年、オムロン本社で「このアイデアを放置するのはもったいない」と事業化が検討されて潮目が変わる。

加藤さんは本社に異動、グループ会社で高血圧関連の研究をしていた宮川さんも学生時代の研究にまつわる事業が立ち上がると本社異動を希望した。

要介護前の高齢者は「元に戻れる」

加藤さんらのチームが注目するのは、「フレイル」(「虚弱な」を意味する英単語”frail”が由来)と呼ばれる状態にある高齢者だ。要支援1〜要介護5の7段階のうち、初期の「要支援1」「要支援2」、またはそれ以前の段階から適切に支援することで、高齢者は再び元気で過ごせる状態に戻れると考える。

要支援の高齢者が要介護状態に陥る原因として多いのが、「高齢による衰弱」や「骨折・転倒」だ。さらにさかのぼると、生活の不活発、つまり運動不足によるものだ。そのため必要以上に介助して運動機能を奪ってしまうと、悪化してしまうかもしれない。訪問・通所型の短期集中予防サービスなどで自立を促すのだが、まず行われるのが自治体の地域包括支援センターの職員による「アセスメント」だ。

サービス内容を決めるために、職員が高齢者宅を一軒一軒回りヒアリングを行うものだが、属人的で、やり方もブラックボックス化されていた。生活上の課題を見極め、その阻害要因がどこにあるのか判定し、3〜6カ月間のサービス終了後に達成していたい目標を定め、さらに面談後に文章としてまとめるには膨大な労力と時間がかかる。手書きでアセスメントを行い、事後でエクセルにまとめていた例もあるという。

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