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今回の坂口志文教授、北川進教授を含めて日本人ノーベル賞受賞者30人のうち10人が京大出身の理系研究者、なぜそこまで集中するのか

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10月13日、スウェーデン大使館主催のレセプションに出席した大阪大学の坂口志文特任教授(右)と京都大学の北川進特別教授(写真:時事)
今年のノーベル賞は「生理学・医学賞」、「化学賞」の2つの分野で日本人研究者が同時に受賞した。自然科学系3賞(物理学、化学、生理学・医学)で日本人が同時に受賞したのは2004年、2015年に次いで3回目だ。坂口志文教授、北川進教授はともに京大出身であり、日本人ノーベル賞受賞者30人のうち実に10人が京大出身の理系研究者ということになる。この背景には何があるのか。2人と親交がある仲野徹・大阪大学大学院名誉教授にこの快挙の背景などについて寄稿していただいた。

ノーベル賞の季節になると、その予想がかまびすしくなる。現役時代は、そういった取材を受けるたびに、発表日になればわかるのだからムダなことはしない方がよい、と言い続けていた。

とはいえ、今年のように存じあげている先生が受賞されたとなると、相当に興奮してしまう。ひとりは坂口志文先生だ。

王道を歩んだ本庶先生、悪路を歩んだ坂口先生

分野はすこし違うが、同じ大阪大学大学院の研究科に所属していたので、仕事を頼んだり頼まれたりしたことがある。その業績は本当に素晴らしい。私の師匠である京都大学の本庶佑先生は若いころから堂々と王道を歩み続けられ、その掉尾としてノーベル賞を受賞された。坂口先生の歩みは、それとは相当に異なっている。

あちこちで詳しく報道されているので紹介するまでもないだろうが、自分の学説がなかなか認められなくてポストを獲得するのにも苦労された。最初に取り組まれた現象は地味なもので、海のものとも山のものともつかなかったはずだ。

その深奥にある細胞を突き止められ、医療に役立てることができるかというところまで推し進めてこられた。結果的には科学の王道ともいえる道筋となった訳であるが、それは困難に満ちあふれた悪路であった。

坂口先生の業績がノーベル賞に値することは重々に承知していたが、受賞されることはないのではないかという噂があった。

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