8月中旬、超音波による乳がん検診をサポートするAI診断支援ソフトウエア「スマートオピニオン METIS Eye(スマオピ)」の運用が、慶応大学予防医療センター(東京都港区)で始まった。目視では気づきにくいごく小さな兆候も検出可能とされ、検診にあたる医師が「もう1つの目」として活用することで見落としを防ぐ。
慶応大や開発会社による記者会見では、乳がん経験者6人も登壇した。6年前に乳がんを患った女性は、診断の1年前に受けた精密検査でがんが見逃された経験を明かし、「AI(人工知能)による診断支援技術によって、1カ月でも早く治療のスタートラインに立てる方が増えれば」と期待を込めた。
ChatGPTなどの生成AIの爆発的な普及により、今や身近なテクノロジーになったAI。医療現場でも、全国的な普及には至っていないものの導入が始まっている。その一つが画像診断支援用のAIだ。
医師とAIがダブルチェック
超音波検査は、ベッドに横になった被検者の体の表面に超音波の送受信をする機器をあてて行う。体内から跳ね返ってきた音をとらえて画像にすることで、臓器や組織の状態を調べるのだ。
スマオピは、医師とAIで超音波検査の画像をダブルチェックするためのソフトウエア。検査技師が撮像したしこりなどの超音波画像を各病院が導入している医療画像管理システムに送ると、0.1秒ほどで自動解析する。AIが精密検査の必要性があると判定した場合は赤い四角で、そうでない場合は緑色の四角で囲って表示する。医師は医療画像管理システムのモニターに映し出された画像を確認しながら結果を判定する(次ページ写真)。
慶応大とソフトウエア開発会社のフィックスターズ(東京都港区)が共同開発した技術をベースに作られた。開発過程では、慶応大を含む日本の医療機関8施設から収集した超音波画像をAIに学習させたという。
精密検査が必要な所見の検出感度は94.4%。医師24人が参加した評価試験では、スマオピを使った場合の正診率は73.1%で、医師単独で読影した場合の正診率69.3%を有意に上回った。





















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