なぜ民主党候補者への支持が高まっているのか？ トランプ政権が無視できないアメリカ国民の｢民意｣と高市政権が学ぶべき教訓

ニューヨーク市長選を制したゾーラン・マムダニ氏。この勝利は、アメリカ全体が民主社会主義へと大きく左傾化する兆候を示しているわけではない（写真：ブルームバーグ）

アメリカで11月4日に行われた州選挙や市長選において民主党候補が次々と制した結果は、トランプ政権への明確な警告であると同時に、日本の高市早苗首相と自民党にとっても決して看過できない教訓を示している。

本連載では、アメリカにおける政治・経済の深層と、ビジネスの未来を方向づける最新トレンドを、日本のリーダー層に向けて発信していきます

「アメリカが急進的に左傾化している」といった評論家らの過熱した予測とは裏腹に、今回の選挙結果が示したのは、有権者が真に望んでいるのは経済的な安定、生活の質の向上、そして何よりも日々の暮らしやすさだというリアルな声だ。

民主党候補が次々に勝利

バージニア州では、CIA出身の元諜報員であるアビゲイル・スパンバーガー氏が共和党候補に大差で勝利した。スパンバーガー氏はかつて対テロ任務のために5冊もの偽装パスポートを所持していたと噂される人物で、中流階級が重視する政策課題を的確に捉え、実利的かつ中道的な民主党の政治姿勢をまさに体現している。

ニュージャージー州知事に当選したミッキー・シェリル氏。バラク・オバマ元大統領（左）も強力に支援した（写真：ブルームバーグ）

ニュージャージー州でも民主党のミッキー・シェリル氏が順当かつ安定した勝利を収めた。アメリカ海軍の元ヘリコプターパイロットであるシェリル氏は、アメリカ海軍兵学校卒業後、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスおよびジョージタウン大学ロースクールで学んだ経歴を持つ。彼女もまた社会主義とは程遠く、穏健かつ中道寄りの民主党を代表する政治家だ。

スパンバーガー氏とシェリル氏、両者の勝利が示しているのは、有権者の日々の苦悩や課題を的確に理解し、それに具体的に応える候補者が、選挙で強さを発揮したという現実である。