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熱帯林皆伐によるバイオマス発電用の木質燃料が日本や韓国に輸出。インドネシア・スラウェシ島に見る、持続可能性の危うさ

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インドネシア・スラウェシ島ゴロンタロ州の熱帯林の皆伐現場。伐採した樹木を原材料としてバイオマス発電用の燃料が生産され、日本や韓国に輸出されている(写真:アウリガ・ヌサンタラ)

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バイオマス発電は、日本の発電電力量の約4%(2024年度)を占める。発電時に二酸化炭素(CO₂)を排出するものの、燃料である木材の生育過程でCO₂を吸収するという理由により、発電企業にとってはCO₂を排出していないとみなされる「カーボンニュートラル」な電源として位置付けられている。
しかし、バイオマス燃料の大半は、木質ペレットやパームヤシ殻(PKS)といった輸入燃料に依存しており、主産地であるベトナムやカナダ、アメリカ、インドネシアなどではさまざまな環境・社会問題が起きている。
「バイオマス発電の現実──持続可能(サステナブル)と言えるのか」と題した連載の第1回は、インドネシア・スラウェシ島ゴロンタロ州での熱帯林開発および木質ペレット生産を取り上げ、バイオマス発電の持続可能性(サステナビリティ)の課題について検証する。

標高2000メートルに達する山の尾根に向かって延々と広がる熱帯林。インドネシアのスラウェシ島は、世界でも有数の生物多様性の宝庫だ。

過去数百万年にわたり、スラウェシ島はスマトラ島やカリマンタン島のようにアジア大陸とつながっていたこともなく、また、ニューギニア島(パプア島)のようにオセアニアと一緒だったこともない。海によって両大陸から隔絶されてきたことにより、世界でも珍しい生態系を形作ってきた。

学術上はアジア系とオーストラリア系の生物相が混在・移行する「ウォーレシア生物地理区」に分類され、12種類に上るメガネザルを始め、多くの種類のマカク(オナガザル科)、アノア(ウシ科)、バビルサ(イノシシ科)といった固有種のほ乳類が生息している。コブサイチョウ(ノッブドホーンビル)などの鳥類や、トビトカゲなど爬虫類の固有種も少なくない。

インドネシア大学のジャトナ・スプリアトナ教授(保全生物学)は、「スラウェシ島では、現在も異なる種が交わることによって進化が頻繁に起きている。中でも島北部のゴロンタロ州は、生物多様性のホットスポットとも呼べるきわめて貴重な地域だ」と指摘する。

そのゴロンタロ州で今、熱帯林を皆伐し、数年で育つ早生樹に植え替えて木質ペレットの原料を生産する新たなビジネスが本格化しようとしている。木質ペレットの販売先は、日本や韓国のバイオマス発電所だ。

生物多様性の中心地で進む熱帯林開発

東洋経済記者は2025年8月、インドネシアや日本、韓国の環境NGO関係者とともにゴロンタロ州を訪れ、熱帯林開発の現場や現地の住民の状況を取材した。現地では熱帯林の皆伐が進み、幹線道路では木材を山積みにしたトラックが伐採現場とペレット工場との間を頻繁に行き来していた。

原木を満載した大型トラック。行き先はペレット工場だ(写真:編集部撮影)

現地で聞いた住民の声は、悲痛に満ちていた。

「この辺りでは数年前から、洪水が深刻になっている。今は、大雨が降るとすぐに川があふれる。今年初めの洪水では水深が1メートルにも達し、たくさんの住宅が被害に遭った。私の自宅も水につかり、親戚宅での避難生活を余儀なくされた」

ある村の村長は、「手の打ちようがない」と語った。村はゴロンタロ州北部にあるが、山脈を越えた州南部の村でも洪水による被害が深刻化していた。

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