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<グレン・S・フクシマ氏>「日米の緊密な関係は変わらない」「日本はアメリカへの依存低下と独自の多国間関係構築が求められる」

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2026年の日米関係はどうなるのか。写真は25年10月28日、東京・赤坂迎賓館で、重要鉱物および希土類に関する協定の調印式に臨むアメリカのドナルド・トランプ大統領(左)と日本の高市早苗首相(写真:ブルームバーグ)

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2025年、日米関係は急変期に突入。日米同盟の構造そのものが、大きく揺らぎ始めている。こうした情勢下、日米関係はどう進むのか。約半世紀にわたり日米関係の最前線を歩んできた、米通商代表部(USTR)元高官のグレン・S・フクシマ氏に見通しを聞いた。(インタビューは11月6日にオンラインで実施)

ーー高市早苗首相が就任直後に臨んだ東京での米トランプ大統領との初会談をどのように評価していますか。

フクシマ氏はカリフォルニア出身の日系3世。慶応大学への留学を経て、東京大学法学部でフルブライト研究員として研究し、英字新聞社や国際法律事務所で勤務するなど、日本滞在歴は20年を超える。1985年にUSTR入省後は、対日通商政策の立案・調整・実施を担当し、スーパー301条交渉や構造問題協議など、日米通商摩擦の核心に関わってきた。退官後も、日本関連の著書を多数執筆し、グローバル企業の日本法人社長や日米関連団体の要職を歴任。政・官・ビジネスの多方面で知られる存在である。現在は、スタンフォード大学で客員研究員を務めている。(撮影:梅谷秀司)

10月28日の初会談は、双方にとって良い形で行われた。両国とも互いを重要なパートナーと認識しており、会談を成功させたいという意図が明確にあった。特に高市首相は、入念な準備を重ねて臨んだ印象がある。

高市首相の周囲には安倍晋三元首相に近い人物が多く、政務秘書官だった今井尚哉氏、通訳の高尾直氏らは、いずれもトランプ氏を熟知した人物だ。彼らはトランプ氏の好みを踏まえ、安倍氏が最後にトランプ氏とプレーした際に使用したゴルフパター、松山英樹選手のサイン入りゴルフバッグ、さらには金色のゴルフボールなど、細部にまで配慮した贈り物を準備し、ノーベル平和賞への推薦も報道された。こうした演出はトランプ氏を喜ばせるためだ。

各国首脳が学んだのは、トランプ氏を気分よくさせることが外交上極めて重要だという点であり、その意味で、高市首相は効果的に対応したといえる。

ーー初会談が円滑に進んだ要因は?

トランプ大統領の側近や、日米両政府の関係者が、トランプ大統領に対して、高市首相は安倍元首相の政治的理念を継承する人物であり、外交・安全保障政策や対中姿勢においても安倍氏と近い立場にあると伝えていた。

そうした背景から、トランプ大統領は思想的に高市首相に親近感を抱いていると考えられる。また、通訳の高尾直氏の存在も見逃せない。トランプ大統領は彼を非常に気に入っており、「小さな首相」という愛称をつけるほどだ。そんな高尾氏が通訳をしている姿を見て、安倍元首相のことを思い起こしただろう。

ーー高市首相への評価は?

私が高市氏に初めて会ったのは1987年。当時、私はUSTRに勤務し、彼女はワシントンDCの議員事務所でインターンをしていた。その後は、あまり連絡を取る機会はなかった。

高市氏は、議員になってからのアメリカ訪問頻度は高くなく、ワシントンDCでは必ずしも知られた存在ではなかった。高市氏が、2021年の自民党総裁選に出馬したとき、ニューヨーク・タイムズが彼女に関する特集記事を掲載した。「女性、ナショナリスト、安倍晋三氏の追随者」が理由だと聞いた。高市氏が、アメリカの主要メディアに大きく取り上げられたのは初めてだった。それ以降、ワシントンDCの「日本ウォッチャー」たちは彼女に注目していたが、一般的には、高市氏は、広く知られている人物ではなかった。そういう意味では、高市氏の首相就任は、ワシントンDCでは少し驚きがあったが、歓迎されている。多くの人々は、日本初の女性首相誕生が意義深いと考えているからだ。

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