経済が安全保障の武器と化す中、国際秩序とビジネスを取り巻く環境は激変している。2026年の世界はどこへ向かうのか。日米の識者が語り合った。
数少ない一貫性のある政策
──大規模な関税措置を発表した4月2日の「解放の日」以来、米トランプ政権による関税政策が世界経済を翻弄し続けています。
鈴木一人 トランプ政権の関税政策は当初、アメリカ経済の自律性を重視する単独行動主義的なアプローチを取っていた。それによって、貿易赤字の削減や同盟国への圧力、アメリカへの製造業回帰を目指していた。
しかし、(債券の下落という)市場の反発や中国の巧みな対抗策に直面した結果、しだいにアメリカ経済の脆弱性を認識せざるをえなくなった。中国は大豆の輸入先をアメリカからブラジルへシフトし、アメリカはレアアースや造船での中国依存を露呈した。アメリカ経済は自律的ではないことがわかり、日本、オーストラリア、韓国といった同盟国との連携を重視する戦略へと舵を切っている。
ランヒー・チェン 関税はトランプ氏が長年こだわり続ける、数少ない一貫性のある政策だ。
トランプ政権は関税を各国との交渉の道具として用いている。実際、インドのようにまだ合意に至っていない国には高関税が維持される一方、日本やスイスのように合意の枠組みを築いた国では関税が下がり始めている。
トランプ氏には、最終目標として見据える対中経済合意の実現に向け、交渉の主導権を高めたいという思惑がある。各国との個別交渉は、そのためのレバレッジを積み上げるプロセスでもある。




















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