
何をするかわからない予測不能性や無理難題をいきなりぶつけて相手国に恐怖心を与える強引さ。トランプ大統領が次々と繰り出す不動産業界仕込みの弱肉強食の手法に今、世界中が振り回されている。
なかでも理解不能なのが「トランプ関税」だ。アメリカ相手に貿易黒字を続ける国に絞るどころか全世界を敵に回す。狙いや意図を一応は説明するものの、まともな経済専門家はこぞって批判する滅茶苦茶な政策だ。
しかし、トランプ大統領や主要閣僚、ブレーンらのこれまでの主張や論考など見ると、単なる思い付きではなく彼らなりの理屈があるようだ。
強烈な被害者意識
トランプ大統領や側近らに最も共通しているのは、数十年にわたってアメリカが世界に利用され傷つき衰退しているという強烈な被害者意識だ。
トランプ大統領は1980年代、すでに「日本をはじめとする国々は何十年もアメリカを利用し続けてきた。なぜこれらの国々はアメリカが失っている人命や数十億ドルの損失に対して賠償金を支払わないのか」と主張している。
1期目には「アメリカとその市民をグローバリズムの犠牲にすることはあり得ない」、「EU(欧州連合)は貿易でアメリカを傷つけるために設立された敵である」などと繰り返し発言している。
さらに2期目になると「EUはアメリカを困らせるために設立されうまくやってきた。だから関税をかける」と、中国だけでなくEUに対しても批判を強めている。
対中強硬派で知られる大統領上級顧問のナバロ氏の被害者意識はトランプ氏以上だ。「アメリカは年間1兆ドルの貿易赤字を出し、過去50年間で20兆ドルの富がほかの国に移った」、「アメリカは世界最大の貿易敗者であり、不公正で不均衡で非相互的な貿易の犠牲者である」と不満を隠さない。
またヴァンス副大統領や、大統領のブレーンで関税政策を進言したと言われるオレン・キャス氏は、アメリカ、カナダ、メキシコが1994年に結んだ北米自由貿易協定(NAFTA)と2001年の中国のWTO加盟によって、アメリカの製造業が空洞化し多くの白人労働者が失業したなどと主張している。彼らを救うためには製造業の復興が不可欠だとし、関税引き上げをその手段としている。
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