トランプ政権の「マールアラーゴ合意」構想、関税からドル安誘導へ。経済と安保の一体化が招く世界秩序の再編

中国の報復関税に対し税率を大幅に引き上げたかと思えば、日本など交渉を望む一部の国には相互関税上乗せ部分の一時停止を発表――一見、場当たり的なトランプ関税だが、実はそれなりの長期戦略に沿って進められているという説もある。
その筋書きを主に書いたのは、同政権で経済諮問委員会(CEA)委員長を務めるスティーブン・ミラン(Stephen Miran)氏とされる。同氏はハーバード大学で経済学の博士号を取得した後、ヘッジファンドのシニア・ストラテジストなどを歴任したエコノミストだ。
ミラン氏がCEA委員長に選任される直前の昨年11月に発表した論文には、世界各国に対して「おおむね20%、最大50%の関税をかけるのが(アメリカに)利益をもたらす」と書かれている。
実際、トランプ大統領が今月2日(アメリカ時間)に発表した相互関税では、中国の57%を筆頭に、EUが20%、日本が24%、インドが26%など、おおむねミラン氏が論文で提案した税率の範囲に収まっている。
関税は各国を交渉の場に引きずり出す道具
この論文の中で注意を要するのは、ミラン氏にとって関税はそれ自体が目的ではなく、むしろ最終的な目標を達成するための道具にすぎないということだ。
その最終目標とは「ドル安誘導による世界経済体制の再構築」である。
これについて同論文では「広範囲にわたる関税と強いドル政策からの転換は、ここ数十年で最も広範な影響をもたらす可能性があり、世界の貿易および金融システムを根本的に再構築するだろう」と記している。
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