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トランプ関税策の次はドル安政策に移行か。世界中からの反発に見舞われている米関税策。「第2の矢」、ドル安政策移行で競争力回復を目指す

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世界中からの反発に見舞われている米関税策。「第2の矢」、ドル安政策への移行で競争力回復を目指す。

アメリカ貿易赤字の解消に強い執念を持つトランプ大統領。戦後の世界秩序を抜本的に変革しようとしている (写真:Getty Images)

貿易赤字解消を目指してトランプ米政権が打ち出した関税策は、他国から強い反発を受けている。関税による輸入物価の上昇を懸念して、アメリカの企業や国民からも批判が高まっている。米国際貿易裁判所は5月28日に、中国、メキシコ、カナダへの一律関税と相互関税を違法とする判決を出した。この判決について、連邦控訴裁判所は効力を一時的に停止する判断を下したため関税策は失効していないが、同様の違法判決が今後増えることも予想される。

このように、トランプ関税策は逆風に見舞われている。ただし、この関税策は、1944年のブレトン・ウッズ体制に始まる戦後の世界秩序を抜本的に変革しようとする、トランプ政権の壮大な構想の一部にすぎない。仮に関税策が行き詰まっても、トランプ政権は次の政策、いわば「第2の矢」に重点を移していく可能性がある。それがドル安政策だ。

トランプ大統領は米貿易赤字の解消に強い執念

ベッセント財務長官は「ブレトン・ウッズ体制の再編」を掲げ、①関税策を通じた消費大国から製造大国へのアメリカ経済の転換、②ドル高是正と基軸通貨の地位維持の両立、③同盟国との安全保障の応分負担、を主張している。

こうした考え方の底流にあるのは、戦後のアメリカは、リーダーであるがゆえに他国から不当に過大な負担を押し付けられてきた、という認識だ。トランプ大統領は、他国から不当に押し付けられた負担の象徴こそが巨額のアメリカ貿易赤字で、それゆえに、アメリカ貿易赤字の解消に強い執念を持っている。

ブレトン・ウッズ体制は、1920年代末に起きた世界恐慌が保護主義の蔓延を招き、第2次世界大戦の遠因にもなったことへの強い反省の下に形づくられた。そこでは、アメリカが主導する自由貿易の推進と安定した国際通貨・決済制度の構築が目指された。

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