トランプ政権の「マールアラーゴ合意」構想、関税からドル安誘導へ。経済と安保の一体化が招く世界秩序の再編
このシナリオでは、まずアメリカ政府が強硬な関税政策を打ち出して世界経済を混乱させる。これによって各国政府を交渉の場に引き込み、そこから新たな通貨協定によってドルの価値を切り下げることを目指している。
その狙いは世界市場におけるアメリカ製品の価格競争力向上と貿易赤字の解消、そしてアメリカ製造業の国内回帰だ。こう聞くと1985年に結ばれた(アメリカの貿易赤字解消とドル高是正を目指した先進5カ国による)プラザ合意と似ているが、今回は同盟国への軍事的圧力も絡めるなど、より強硬なものとなっている。
トランプ大統領やミラン委員長、さらに彼らと共にこの構想を練ったスコット・ベッセント財務長官らはこれを(フロリダ州パームビーチにあるトランプ大統領の別荘・リゾート施設名にちなんで)「マールアラーゴ合意(Mar-a-Lago Accord)」と呼んでいる(ただしプラザ合意のように各国間の本物の合意ではなく、あくまでミラン氏ら政権関係者が内輪でそう呼んでいるにすぎない)。
今後、各国政府がこのマールアラーゴ合意に従わなければ、アメリカはNATOや日米安保条約などの防衛義務を放棄する可能性すらあると囁かれている。
為替による相殺でアメリカ経済への打撃は抑えられる?
こうした大胆な経済構想の是非はともかく、それを実現する手段として世界各国に高い関税を課すことにアメリカの経済学者の大半は反対している。これまで世界経済の繁栄は自由貿易によってもたらされたことは論を待たないからだ。
また外国からの輸入品に高い関税を課せば、アメリカ国内の物価が高騰して損をするのは当のアメリカ国民のはずだ。ただ、この点についてミラン氏ら一部の経済学者は異論を唱えている。
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