「1.5兆円は過大」 市場関係者が悩むSBI新生銀行の公開価格。重要指標の9月期決算に向け、採算度外視のバランスシート拡大戦略が進行中

「どうそろばんをはじいても1.5兆円にはならない」。市場関係者がこう話すのは、7月11日に東京証券取引所に上場を申請したSBI新生銀行の時価総額目標だ。
同行は東証の承認を前提に年内にも再上場を果たす意向で、上場時の時価総額は1兆5000億円超えを目指す考えだ。筆頭主幹事証券は野村証券とゴールドマン・サックス証券。このほかSMBC日興証券、みずほ証券、BofA証券、SBI証券が共同主幹事を務める見込みだ。
東証の承認を経て仮条件や公開価格を決定するプロセスを進めていくことになるが、早くも関係者が、目標価格と実力値の乖離の大きさに頭を悩ませている。
げたをはかせた純利益
SBI新生銀行が2023年9月28日に非上場化した際の時価総額は5671億円。2023年3月期に427億円だった連結純利益は2025年3月期にほぼ倍の844億円まで拡大し、預金残高は7.8兆円から11.5兆円に増加。貸出金残高も6.8兆円から9.5兆円まで増えており、同行の企業価値は上場廃止時と比べて大幅に高まっているように見える。
懸案だった公的資金の約2300億円も7月31日に完済する。返済資金は親会社のSBIホールディングス(HD)が全額負担することから、公的優先株の処分はSBIHDが国から直接買い入れる手法が採用される見通しだ。同行は資本面でも、自己資本比率を下げることなく上場に向かうことができる。
だが、前出の市場関係者は、SBI新生銀行の現状の時価総額は「1兆円にも届いていない」とし、「実力ベースの純利益を基に試算すると7000億円程度」だと話す。表面的な数字ほど「稼ぐ力が伴っていない」(同)というわけだ。
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