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執念見せたドコモ、“悲願の銀行買収”に透ける焦り 「交渉破談⇒住信SBIネット銀の早期獲得」に動いた背景とは?

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強化する非通信領域で「欠けたピース」を手に入れたNTTドコモだが、本業の立て直しも迫られている(上写真:尾形文繁撮影、下写真:風間仁一郎撮影)

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「銀行業への本格参入により、ドコモの金融サービスがフルラインナップでそろう。スマホ1つで、貯金、決済、投資、保険、融資、ポイントに至るまで、まとめて便利に利用いただけるようになる」

NTTは5月29日、SBIホールディングス(HD)と資本業務提携を締結し、同社が34.19%を出資する住信SBIネット銀行をNTTドコモが買収すると発表した。

ドコモは市場でのTOB(株式公開買い付け)やSBIHD保有の全株式取得を経て、11月ごろにも住信SBIネット銀を連結子会社化する。TOB価格は1株当たり4900円で、買収総額は約4200億円に上る見通しだ。

一連の取引の完了後、住信SBIネット銀はドコモが65.81%、既存大株主の三井住友信託銀行が34.19%を出資する体制へと移行し、議決権比率は両社で50%ずつとなる。ドコモの前田義晃社長は同日の記者会見で、銀行買収の意義について冒頭のように語った。

“2024年度中”の決着を掲げてきた

「銀行は必要なピースだ」――。およそ1年前に開かれた、ドコモの社長就任会見。前田社長はM&Aを含めた形での銀行業参入への意欲を明らかにし、その後の報道各社のインタビューなどで「2024年度中にメドをつけたい」と具体的な目標時期にまで言及していた。

スマホの普及で個人向け通信市場は飽和しており、ドコモは2020年のNTTによる完全子会社化を経て、業界最大の顧客基盤を武器に、金融を軸とする非通信事業の強化に注力する。クレジットカード「dカード」やキャッシュレス決済「d払い」が順調に伸び、2024年にはマネックス証券、オリックス・クレジット(現ドコモ・ファイナンス)を相次いで子会社化した。

非通信に当たる「スマートライフ」事業の2025年3月期の営業収益は前年同期比12.6%増の1兆2279億円、営業利益は14.3%増の2336億円と好成長が続く。

証券、クレジットカード、決済、共通ポイント……。さまざまな金融関連サービスをそろえる中でも、ドコモに欠けていたのが、金融領域を連携させる基盤にもなりうる自前の銀行だった。すでにKDDIはauじぶん銀行、ソフトバンクはPayPay銀行、楽天グループはネットバンクで国内最大級の楽天銀行を傘下に置き、競合と比べても出遅れが目立っていた。

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