"音響の名門"パイオニアの「台湾傘下入り」が秘める《車のスマホ化》という希望と《経済安保》のリスク

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2004年にパイオニアが試作した大画面の未来型カーナビゲーションシステム(写真:時事)
日本のオーディオ産業は、1970年代から1980年代にかけて多くの専業メーカーが登場し、まばゆいばかりの輝きを放った。なかでもパイオニアは、大手家電メーカーが“横綱”であるとすれば、その座を脅かす“大関”のような存在だった。
「昭和の音楽世代」にとっては、単なるメーカーではない。「パイオニア」と聞けば、あの時代が蘇る。一時期、創業者とも交流した筆者が、再燃する昭和レトロブームに誘われるかのように、日本のオーディオ産業の軌跡をたどり、「第2のソニー」になり損ねたパイオニアの成功と失敗について、前後編に分けて解説する。
前編:ついに台湾企業の傘下へ、"第2のソニー"になり損ねた「音響の名門」パイオニアがたどった蹉跌
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車載機器を中核に新たな活路を見いだす

プラズマテレビ事業からの撤退後、パイオニアは経営危機に陥り、2019年にはアジア系ファンドのベアリング・プライベート・エクイティ・アジア(BPEA)傘下へ、そして2022年にはスウェーデンのEQTに買収されるなど、海外資本の傘下を転々とした。

この間、虎の子だったクラブやイベントで音楽を操るDJ(ディスクジョッキー)事業や地図事業子会社の売却といった苛烈な構造改革を経て、生き残りをかけてカーオーディオやカーナビなどの車載機器に特化してきた。現在、自動車内で動画を視聴できるカーナビや高価格帯のカーオーディオ、スピーカーなどが好調に推移している。

また、カーナビ事業で培った地図データを活用し、地図アプリサービスの事業も拡大。2024年には2輪車向けナビサービスを開始し、オランダのデジタル地図大手ヒアテクノロジーズと協業してアジア市場での展開も進めるなど、新たな活路を見いだそうとしている。

2025年2月にはドイツに海外4拠点目となる研究開発拠点を設置し、欧州車メーカー向けにスピーカーやアンプを開発するなど、市販ではなく、自動車メーカーに直接納めるBtoB(企業対企業)領域への拡大を図っている。

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