"音響の名門"パイオニアの「台湾傘下入り」が秘める《車のスマホ化》という希望と《経済安保》のリスク

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パイオニアが今回の買収によって、過去の「失敗からの学び」を生かし、真の“開拓者”として再び輝きを取り戻せるのか。それは、今後の経営戦略に懸かっている。

かつての栄光に固執せず、時代が求める新たな価値を創造できるか。創業者の松本望氏が掲げた「音をもって社会に貢献する」という理念は、現代において「移動体験をもって社会に貢献する」という形へと進化しつつある。

外国企業の傘下に入ることの是非

外国企業の傘下で事業を展開することは、グローバル化が進む現代において、日本で誕生したブランドが存続するための現実的な手段となりうる。しかし、シャープやパイオニアのように、海外企業の資本傘下に入った時点で「日本企業の製品」とはいえない。

この現象は、もはや家電業界では珍しいことではない。例えば、かつて東芝のテレビブランドであった「REGZA(レグザ)」は現在、中国の電機メーカーである海信集団(ハイセンスグループ)の傘下にあるTVS REGZA社が製造・販売している。

また、東芝の白物家電事業も、中国の美的集団(マイディア・グループ)に売却され、「東芝ライフスタイル」として事業を継続している。同様に、三洋電機の洗濯機ブランドであった「アクア」は、中国のハイアールグループに買収され、現在もそのブランド名で製品が展開されている。

今後、消費者が「日本企業の製品」と思って購入したところ、実際には中国、台湾企業、あるいはその他の外国企業のブランド、というケースはますます増えてくることだろう。
多くの日本人にとって、これは決して喜ばしいことではない。

むしろ、「中国や台湾のブランドになってまで存続させる必要があったのか」「これまでの投資や培ってきた技術は無になってしまうのではないか」と思う日本人がいても不思議ではない。

経営学者の伊丹敬之・一橋大学名誉教授が近著『漂流する日本企業 どこで、なにを、間違え、迷走したのか?』(東洋経済新報社、2023年)で指摘するように、日本が持つ強み、例えば、質の高い人材、優れた技術、こまやかな顧客対応能力などが、十分に活用されていない状況は「もったいない」。

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