【苦渋の決断】キユーピーが65年続いた育児食から撤退へ・・・市場は拡大傾向でも、赤字が続いた理由とは? 業界トップの和光堂は新市場開拓へ

「価値を認めていただく力が、われわれにはなかった。検討に検討を重ねたが、苦渋の決断だった」。7月3日に開かれた調味料大手・キユーピーの2025年11月期第2四半期決算会見の場で、髙宮満社長は苦しそうな表情でそう語った。
6月にキユーピーは育児食(ベビーフード・幼児食)からの撤退を発表した。2026年8月末に全72品目の生産を停止、順次販売を終了する。
1万3000件のオンライン署名
同社が育児食の販売を開始したのは1960年。持ち運びやすく開封してそのまま食べられる瓶詰タイプなど、利便性の高さや月齢ごとに豊富にそろえる商品ラインナップで消費者の支持を集めてきたが、65年の歴史に幕を閉じることになった。
「悲しくてたまらない」「社会から見放された気持ち」「もう次の子を産むのは諦めた」――。突然の撤退報道を受け、SNSなどでは落胆の声が続出。製造販売の継続を求め、オンライン署名サイトでは1万3000件以上の署名が集まるなど大きな話題となった。
大手のキユーピーが撤退にまで追い込まれた育児食業界。急速に進む少子化を背景に事業環境は厳しさを増している印象を持つが、実はここ数年は右肩上がりで成長してきた。

共働き世帯の増加で、離乳食などを手作りする時間のない親からのニーズは拡大。さらに、親が子ども1人当たりにかける金額が増え、より高単価で付加価値の高い商品の人気も高まっている。2022年以降、大手各社が実施した値上げで商品単価が上がったのも一因だ。
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