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ジャック・アタリ「人類文明は消滅の危機にある」、今こそ将来の世代の利益を最優先にするべきだ

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ジャック・アタリ氏は「人類文明の危機」を訴えている(写真:ブルームバーグ)

どのような時代の人々も、「自分たちは前例のない時代に生き、独自の課題に直面している」と信じている。しかし繰り返し、同じパターンと動機が文明を弱体化させ、時には破壊さえもたらす一方で、文明を強化し繁栄を可能にしてきた。過去から学ぶには、その対称性と共鳴を認識することが必要だ。

チェコ・プラハに本拠を置く国際的NPO「プロジェクト・シンジケート」は多くの有力者の論評・分析を配信しています。「グローバルアイ」では、主に同シンジケートのコラムの中から厳選して翻訳・配信しています

例えば、数世紀にわたる大国の興亡は、いくつかの基本原則を確立してきた。その中でも最も重要なのは、支配的な大国が二つのライバルに直面した場合、支配的な大国と対立していないほうのライバルが通常は勝利するということである。

18世紀後半、イギリスはオランダ(当時の支配的勢力)に勝利した。一方、オランダと戦争を交えたもう一つの競争国であるフランスは、超大国となることはなかった。20世紀初頭、アメリカがイギリスに勝利したのは、主にイギリスとそのライバルであるドイツとの戦争によるものだった。

帝国を維持するための条件

もう一つの教訓は、帝国は後背地と交易路の安全保障を維持できなくなった時に崩壊するということだ。スペインの黄金時代は、植民地防衛に必要な軍事費を支えきれなくなった時に終焉を迎えた。大英帝国の基盤は維持不可能な海軍の覇権に依存していた。ソビエト連邦は、強大さと過剰な軍備を混同したために崩壊した。

第三の教訓は、文明が成功に向けて整えられていても、自滅的な過ちの重みに押し潰されることがあるという点だ。例えば20世紀初頭、西洋は繁栄の絶頂期を迎えたかに見えた。電化、自動車、電話、ラジオ、航空旅行の登場により技術進歩は加速し、貧困と戦争の悪循環は断ち切られたかに思われた。

世界貿易は急成長していた(特にイギリスとドイツの間で)。民主主義は進展していた(ロシアでさえ、1905年の革命が新たな自由の時代を告げた)。ヨーロッパの君主たちは良好な関係にあった(ジョージ5世はヴィルヘルム2世とニコライ2世の従兄弟だった)。そして1908年までに、世界的な紛争を解決するための制度的枠組みが設計されていた。

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