高市早苗総理発言への"過剰反応"に透ける中国側の思惑。日本はこの事態をどう活用すべきか
中国は、2025年11月7日の高市早苗総理による台湾に関する発言以降、厳しい日本批判を連日展開している。
日本への渡航延期勧告や日本産水産物の輸入停止といった対抗措置に加え、外交部定例会見や各国との会談などで日本を批判し、総理の発言内容と比較して過剰なまでの反発を示している。高市総理の発言がなされてから反発するまで時間差があったことなども考えれば、中国は今回の発言を何らかの形で利用しようとしているのだろう。
では、中国は何を考え、何を狙っているのだろうか。今回の反応から見える中国の思惑と、日本は今回の事態をどう活用すべきかを考えたい。
台湾問題の宣伝戦を強化
まず中国は、今回の発言に反発することで、国際社会において台湾に関する宣伝戦を強化しようとしている。ここ数年、中国は台湾に関する自国の立場を浸透させるべく、外交や宣伝面での活動を活発化させてきた。
例えば他国との2国間文書には、中国の立場(世界に中国は1つ、台湾は中国の不可分の一部、中華人民共和国政府が中国を代表する唯一の合法政府)だけでなく、「中国が国家統一のために行う努力」への支持が明記される例が増えている。
これは中国による台湾への武力行使をも支持する内容であるが、25年11月だけでもシリア、ウズベキスタン、タジキスタン、トンガとの間の2国間文書に、この文言がみられる。
さらに中国は、1971年に国連総会で採択された総会決議2758号について、同決議は代表権を中華民国から中華人民共和国に変更しただけでなく、台湾が中国の一部だと認めたものと主張している。25年9月には、「国連総会決議第2758号に関する立場」と題する文書を発表し、中国の主張を認めないのは第2次世界大戦後の国際秩序への挑戦だとした。そして、中国は、この主張への支持を明記する2国間文書を増やしている。
中国は、今回の高市総理の発言にいわば「便乗」して声を大きく上げ、各国に台湾との交流を減らさせようと圧力をかけようとしている。王毅外交部長は、25年11月に米英露仏との間で、12月に入ってもドイツやブルネイとの外相会談で日本を名指しして批判し、戦後秩序に挑戦しているといったプロパガンダ(政治的宣伝)を実施。国連安保理での日本批判など、国際場裏でも宣伝戦の便乗を続けている。
また、欧米や東南アジアには、台湾との経済関係や人的交流が緊密な国も多いが、中国外交部は過剰なまでに大きな反応をし、戦後秩序と結びつけたナラティブ(言説)を働きかけ、台湾との関係を見直すように牽制している。



















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