歴史学者ハラリがAI時代「世界は複数のデジタル帝国」に分割されると危惧する事情

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ユヴァル・ノア・ハラリ
「銃を手にしたロボットたちが市街を暴れ回るといった、ハリウッド映画の場面は忘れたほうがいい。現実には、AIはそれよりもはるかに危険だ」
歴史家で著述家のユヴァル・ノア・ハラリが、『NEXUS 情報の人類史』(柴田裕之訳)でそう警告する。以下は同書から抜粋・再構成したものだ。
前回記事:テロリストがAIで世界を壊滅させる…歴史学者ハラリが示す人類の「危険シナリオ」

世界が分断される情報の繭

過去何世紀もの間、さまざまな新しい情報テクノロジーがグローバル化の過程を推し進め、世界中の人々がしだいに緊密に接触できるようになった。皮肉にも、今日の情報テクノロジーはあまりに強力なので、異なる人々を別個の情報の繭(コクーン)の中に囲い込んで人類を分断し、人間として単一の現実を共有するという考え方に終止符を打つ可能性がある。数十年にわたって、世界の主要な比喩は網(ウェブ)だった。だが、今後数十年間の主要な比喩はコクーンになるかもしれない。

中国とアメリカは現在、AI開発競争で先頭に立っているが、この競争の参加者は両国だけではない。EUやインド、ブラジル、ロシアといった他のブロックや国も、それぞれ異なる政治的・文化的・宗教的伝統の影響を受けた、独自のデジタルコクーンを生み出そうとするかもしれない。そして、世界は2つのグローバルな帝国によって分割されるのではなく、10余りの帝国によって分割されるかもしれない。

新帝国間の競争が激しいほど、武力紛争の危険が高まる。アメリカとソ連の間の冷戦は、主に相互確証破壊の原則のおかげで、直接の軍事衝突に発展することはなかった。だが、AI時代には軍事衝突への発展の危険性は、もっと大きい。なぜなら、サイバー戦争は核戦争とは本質的に異なるからだ。

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