歴史学者ハラリがAI時代「世界は複数のデジタル帝国」に分割されると危惧する事情

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

サイバー兵器は一国の送電網を機能停止に陥れることができるが、秘密の研究施設を破壊したり、敵のセンサーを妨害したり、政治スキャンダルに火をつけたり、選挙を操作したり、一台のスマートフォンをハッキングしたりするのにも使うことができる。そして、そのすべてを密かに行なうことができる。キノコ雲や火災の嵐によって自らの存在を告げることもないし、発射台から標的まで目に見える軌跡を残すこともない。

そのため、そもそも攻撃が行なわれたのかどうかや、誰が攻撃を行なったのかを知るのが難しいことがある。したがって、限定的なサイバー戦争を始める誘惑は大きい。そして、その戦争を拡大する誘惑にしても同じだ。

予測可能性の違い

第二のきわめて重要な違いは、予測可能性にかかわるものだ。冷戦は、超合理的なチェスの対局のようなもので、核戦争が起これば壊滅的な結果になることはほぼ確実だったため、それに即して、戦争を始めたいという気持ちも小さかった。ところが、サイバー戦争にはそのような確実性がない。それぞれの陣営がどこに論理爆弾(ロジックボム)〔訳註:一定の条件下で起動する、悪意のあるソフトウェア〕や「トロイの木馬」やマルウェアを仕込んだのか、誰にもはっきりとはわからない。

使おうと思ったときに、自分の兵器が本当に機能するかどうかも、誰にもわからない。中国のミサイルは、命令が下されたときにきちんと発射されるのか、それとも、ひょっとするとアメリカによってミサイルや命令系統がハッキングされてしまっているのか? アメリカの航空母艦は期待どおりの働きをするのか、それとも、ことによると不思議にも機能を停止したり、ぐるぐると円を描くばかりになったりしてしまうのか?

次ページはこちら
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事