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台湾で前例のない「大規模リコール」。権力闘争も帯びた投票の結果次第では台湾政治の今後を大きく左右

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台湾リコール投票の集会
7月26日に行われるリコール投票まで連日にわたり賛成派と反対派がそれぞれ集会など活動を繰り広げた。写真は24日に行われた賛成派の集会(写真:Getty Images)

台湾で立法委員(国会議員)の3割弱となる31人の罷免(解職、リコール)を問う投票が行われる。対象となっているのは最大野党・国民党の立法委員で、7月26日に24人、8月23日に7人の投票がそれぞれ行われる予定だ。

リコールとその後に行われる補欠選挙の結果次第では、台湾内政だけでなく、国際社会が大きな関心を寄せる台湾情勢にも影響を及ぼしかねない。

台湾ではこれまでも立法委員や地方首長など公職者のリコール投票が行われてきたが、同時に20人以上が対象になったことはない。前例のない大規模リコール投票は、与党・民進党を支持する市民団体が中心となって行った署名活動の結果、署名数が規定数に達したことで実現する運びとなった。リコールが成立するには、賛成票が反対票を上回り、かつ賛成票がその選挙区の有権者総数の4分の1以上となる必要がある。

「ねじれ国会」で広がった野党への批判

リコール投票にいたった背景には、2024年1月に実施された総統選挙と立法院(国会)選挙の結果がある。総統選挙では民進党の頼清徳氏が当選して同党の政権継続が決まったが、立法院で民進党が獲得した議席は113議席のうち51議席にとどまり、過半数には届かなかった。この「ねじれ国会」の中で最大野党・国民党への批判が強まった。

52議席を持つ国民党と8議席を持つ第2野党・台湾民衆党が議会で多数派をとり、政府予算案の削減や一部凍結、立法院の調査権限強化法などを可決させ、民進党は少数与党として厳しい政権運営を強いられている。一部官庁では予算不足で業務に支障が生じたほか、防衛予算なども削られた。

この状況に対して、与党を支持する人たちが中心となり「野党は立法院で横暴な審議や法案可決を強行している」として国会周辺などで断続的に抗議活動が行われた。それが野党議員の解職、罷免を求める活動にまで広がり、今回のリコール投票につながった。

民進党は立法院で過半数に6議席足りない。リコール成立後3カ月以内に行われる補選において6つの選挙区で勝利できれば、次の立法委員選挙前に過半数を回復し、政権運営を円滑化できるとの期待がある。

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