台湾総統選挙「だから私はこの人に投票する」 台湾選挙のリアル①・三つ巴の戦いで有権者は
2024年1月13日に行われる台湾の総統選挙前となる1月6日、張志玲さん(32)は台中市で開催された民衆党の総統候補である柯文哲の支持集会に参加した。
張さんは政治に強い関心を持っていたものの、集会に足を向けたのは初めての経験だった。彼女は候補者の旗を振りながら、他の支持者とともに「台湾の選択、柯文哲! 総統となって台湾をよくしよう!」と叫んだ。
民進党の票田の一つ、台湾最南端に位置する屏東で生まれた張さんは、これまで2回の総統選では民進党の蔡英文に投票した。しかし、柯文哲の存在感が高まるにつれ、張さんの気持ちは徐々に変わっていった。
「柯文哲こそ私が望んでいた政治家」
「柯文哲候補の発言は、中立的でとても直接的だ。これまでの民進党や国民党の政治家の官僚的な答弁より、われわれ市民の声を代弁している。社会問題などに素早く回答している。まさに私が望んでいた政治スタイルだ」
柯文哲はこれまで、「民進党政権では不正が多かった。国民党は数十人の立法委員(国会議員)がいるのにもかかわらず、政権批判をやっていない。民進党が食べた肉の残りや骨を、国民党が食べている。不正の共犯者だ」と訴えた。
こんな簡潔明瞭な発言で、8年間政権を握ってきた与党・民進党と最大野党・国民党をあからさまに批判する。こうしたスタイルで柯文哲は、張さんのような台湾の20代、30代の有権者からの熱い支持を得ている。
新型コロナウイルス感染症が拡大した2020年初頭、2期目に入ろうとした民進党政権はすばやく中国への入国を制限するなど感染拡大を防いだ。コロナ禍の最初の2年間の半分以上を、台湾は「感染者ゼロ」で過ごした。
国家秩序と市民の日常生活は安定的に維持され、また半導体輸出が好調だったこともあり、他国より経済状態はよかった。外国メディアもこれについて大きく報道して賞賛し、台湾は世界からの注目を集めた。
多くの国民は蔡英文総統によい評価を与え、民進党もそれを自慢してきた。しかし、不満もなくはなかった。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら