軍事力での中国抑制に警鐘を鳴らした米研究者 バイデン政権の足元で対中政策の変更を迫る
台湾有事を煽り中国への軍事抑止を強化するアメリカのバイデン政権の戦略は、中国の対米不信を招くだけで逆効果と批判、「1つの中国政策」を保証する「安心」を中国に供与すべきという提言が、バイデン政権の足元から出始めた。
アメリカ一極支配を支えてきた国際秩序のシフトが鮮明化する現状を反映する主張でもある。バイデン政権と二人三脚で対中軍事抑止政策を進めてきた岸田文雄政権にも反省が迫られる内容だけに、中国との首脳会談再開を急ぐ日本も政策転換を迫られことになる。
バイデン政権の「身内」3学者からの提言
提言は「台湾と抑止力の真の源泉」というタイトルでアメリカの外交誌「フォーリンアフェアーズ」(2023年11月30日)に掲載された。
筆者は、アメリカ歴代政権の台湾政策に影響力を及ぼしてきた台湾研究者ボニー・グレーザー氏(ジャーマン・マーシャル基金)とトーマス・クリステンセン氏(アジア・ソサエティ政策研究所中国分析センター上級研究員)、ジェシカ・チェン・ワイス・コーネル大学教授の3人だ。
クリステンセン、ワイス両氏は、ブッシュ(子)政権およびバイデン政権下の国務省で中国政策をアドバイスしてきており、いわばバイデン政権の「身内」と言える。
バイデン政権は、「中国との争い」を新たな世界戦略の中心に据え、台湾有事を煽って日本など同盟国との協力強化によって、中国を軍事抑止する「統合抑止戦略」を進めてしてきた。
これに対し中国は、バイデン政権の狙いを「1つの中国政策」を骨抜きにし、台湾の分離統治を固定化する試み(台湾白書)と強烈に反発、台湾問題は米中対立の核心的地位を占めてきた。
「軍事的抑止」とは「軍事力によって相手の行動を事前に抑え込む」のを意味するが、3氏は「抑止力とは兵器、地上兵力、飛行機、艦船や机上の戦略だけの問題ではない。軍事的脅威を示すことは抑止戦略の成功の一部に過ぎない」とし「軍事抑止」だけに頼る思考を批判する。
米中台3者がそれぞれ互いに「安心」を供与することによって、初めて「軍事抑止が効果を発揮する」とみる。
台湾海峡をめぐる現状を3氏は、「米中台は互いに十分な安心保証をしていない」として、それが三者間の不信感を高めているとみる。
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