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――ライバル大手私鉄に先駆けて、不動産事業強化の戦略を明確にした理由は?
不動産戦略は当社の長期戦略における大きな核として位置づけている。そもそもの始まりは、2021年5月に発表した前の中期経営計画だ。2021年3月期決算がどん底で(723億円の最終赤字)、財務が大きく傷んだときに、「長期的に持続可能な事業構造を目指す」と舵を切った。その際に、「総合不動産事業を目指す」と宣言し、そこから着々と手を打ってきた。
2024年度からスタートした新中計では、不動産戦略を加速することを打ち出した。2024年度は「種まき期」として始まり、今期はその2年目、土台作りの段階だ。今年2月には大規模複合施設「東京ガーデンテラス紀尾井町」の流動化を完了し、さらに5月にはモルガン・スタンレー・キャピタルとの共同ファンドによるSPC(特別目的会社)に複数の物件を売却した。
「紀尾井町」を4000億円で売却
――赤坂プリンスホテルの跡地であるガーデンテラス紀尾井町の取引は約4000億円と規模が大きく、不動産デベロッパーの関係者の間からも驚きの声が上がっていました。
不動産事業の種まき期において、ガーデンテラス紀尾井町の案件は重要な意味を持っていた。再開発を進めて物件の価値を上げた後、それを売却して資金を回収するという「キャピタルリサイクル」の先駆的なモデルとなるためだ。その含み益を顕在化させたことで、会社の経営に弾みがついた。会社が走り出すときに、勢いをつけることは非常に重要だ。
紀尾井町の案件は、不動産取引に詳しい社員やパートナーでも身が引き締まり、震えがきても過言ではないディールだった。当グループの歴史が詰まった土地であり、プリンスホテル関係者も含め、多くの人が関わっていた。今後は新中計で掲げた「刈り取り期」に向けて進んでいかなければならない。
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