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独自路線をひた走る不動産デベのヒューリックが一段成長を標榜、安定収益基盤の構築、M&Aによる事業領域の拡大、海外展開の加速を目論む

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前田隆也/まえだ・たかや 1962年生まれ、1984年東京大学工学部卒業後、大成建設入社。不動産開発に従事し、2007年ヒューリック入社。取締役執行役員不動産統括部長などを経て、2022年3月より現職(写真:梅谷秀司)
都心の中規模物件の開発、投資に特化する独自の戦略で急成長を遂げてきた不動産デベロッパーのヒューリック。2024年12月期の経常利益は1543億円と2014年度比で約4.5倍にまで拡大した。前田隆也社長は「この先も高成長を続けるためには、事業の多角化を進めることが重要だ」と強調する。収益の柱である不動産売却、賃貸に依存しない事業ポートフォリオをいかに構築するのか、前田社長に聞いた。

銀座や青山・渋谷の開発に注力

――直近の不動産市場をどう分析していますか。

都内のオフィスビルの空室率はコロナ禍中に6%を超えたが、直近では3%台にまで回復した。コロナ禍を受けて日本での不動産投資に消極的だった海外投資家も戻りつつある。不動産賃貸も売買も市況は非常によい。経済の状況を鑑みれば、金利も急激には引き上げられないだろう。

ただ、建築費の高騰の影響は避けられない。建築業界の人手不足は深刻で、建築費の中でも特に労務費は上がり続けていくだろう。

中期経営計画(2025~2027年度)の期間中に竣工してくる物件の大半は建築費がほぼ確定しており、足元の建築コスト高騰の影響を大きくは受けない。だが、これから開発する物件についてはより厳選することを決めた。当社が重点エリアとして定める銀座、青山・渋谷などでの開発にさらに注力していく。これらの地域は賃料がしっかり上昇しており、工事費の高騰を吸収できる。

――中計では最終年度である2027年度は経常利益1800億円以上の目標を掲げています。3年間の累計で経常利益を約260億円伸ばす計算ですが、前中計では3年間累計で300億円以上の増益を達成しており、成長がトーンダウンしているように見えます。

足元の業績は好調で、経常利益で年100億円以上の成長を目指せる地力はある。あくまで10年間の中長期経営計画(2020~2029年度)で掲げた2029年度目標の経常利益1800億円を2027年度に前倒しで達成するという意思表示だ。2028年度から新しい中長期経営計画をスタートさせたい。いまは時代が大きく変わる転換点にあり、早く次の10年の方向を示すことが重要だ。

高い利益成長、高い資本効率が当社の強みであり、他のデベロッパーには真似できない点だろう。次の10年も、この強みを生かしながら事業を伸ばし、経常利益で年100億円以上の成長を続けたい。

――時代が大きく変わるとは、具体的には?

金利の上昇や建築費の高騰など今後の市場環境が大きく変わることが予測される中で、変化に柔軟に対応できる事業構造にする必要がある。不動産売却、賃貸事業だけに依存せず、リソー教育やレーサムなど子会社の成長やM&A(合併・買収)による事業領域の拡大、蓄電所をはじめとする新規事業の開拓を進め、収益の柱を多角化させていく。

今後、3年間でM&Aや新規事業の開拓などに最大で3700億円を投じる計画だ。中期的にはM&Aによる事業領域の拡大や新規事業の成長で営業利益の3分の1を稼げるようにしたい。

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