有料会員限定

「大企業病に陥っていた」ーー。ジンズホールディングスの田中CEOが全社員に伝えた「仰天メッセージ」とは?業績V字回復の裏側で起きていたこと

✎ 1〜 ✎ 377 ✎ 378 ✎ 379 ✎ 380
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

有料会員限定記事の印刷ページの表示は、有料会員登録が必要です。

はこちら

はこちら

縮小
田中仁/たなか・ひとし 1963年群馬県生まれ。1981年前橋信用金庫(現しののめ信用金庫)入庫、1986年スタジオクリップ入社、1987年個人にて服飾雑貨製造卸業のジンプロダクツを創業、1988年 ジェイアイエヌ(現ジンズホールディングス)を設立、代表取締役社長に就任。2001年アイウエア事業「JINS」(ジンズ)を開始。オイシックスや日本通信の社外取締役のほか、地元前橋で廃業になった老舗ホテルを買収するなど、街づくりにも力を入れている(撮影:梅谷秀司)
ブルーライトを遮断できるメガネ「JINS PC」で一世を風靡してから14年。眼鏡大手のジンズホールディングスは、手を使わずに頭を動かすだけでデバイスを操作できる眼鏡など新たな製品の開発を続けている。業績を見ると、2020年8月から3期連続で営業減益となり、その後2023年8月期からは一転して増益基調をたどり、2025年8月期については営業利益108億円と過去最高を見込む。業績好調の背景にあるものは何か、田中仁代表取締役CEO(最高経営責任者)に聞いた。

 

――ジンズの眼鏡は消費者間では「低価格」のイメージが強いです。今のジンズのポジショニングをどう捉えていますか。

10年前はアウトロー的な存在だった。「異分子がきた」というようなイメージがあったと思うが、今は若い人だけでなく「メガネといえばジンズ」という認識が増えてきて、メインストリームになったのではないか。

ジンズの一式単価(レンズ込みの単価)はまだ1万円台前半(2024年8月期は1万661円)であることを踏まえると、低価格帯だろう。

眼鏡は店員が1対1で顧客と接する時間が長く、接客の質がリピーター獲得につながるため、ただ安ければいいというものではない。1人ひとりに満足してもらうためには、接客、そして商品の質も上げていかなければならない。その結果、単価自体は上がってきている。

手強い競合との違いは?

――低価格帯の眼鏡ブランドとしては「Zoff(ゾフ)」や「OWNDAYS(オンデーズ)」など競合も手強いです。

うちは独自の道を追求してきたので、差別化できているし、全然違うブランドだと思っている。一方で消費者側はすべて似たようなブランドだと思っている。その違いを理解してもらうのに時間がかかっているが、いずれはわかる。

――独自の道とは、具体的には?

値段と商品の品質とのバランス、マーケティングやブランディング、先進的で新たな価値を生み出しているという点で他社と大きく異なる。

例えば、ブルーライトカットの眼鏡フレームはジンズが開発し、他社が後追いをした。当時はIPや知財に対する知識や経験がなく、何もしなかったが、これからはこうした点もしっかり担保していく。

4月には「JINS360°(サンロクマル)」という、曲げても壊れにくい眼鏡を出したが、今までにない機能のものを出すと皆さん喜ぶ。つねに先進的なものを出しているのがジンズだ。最近では近視抑制の研究もやっている。そうした競合他社はなく、これが歴然とした差につながっていく。

――ジンズは眼鏡の役割の捉え方が他社とは違うのでしょうか。

眼鏡は「まだ見ぬ光」の入口になるものだと思っている。例えば、2月には「JINS ASSIST(ジンズアシスト)」という、頭の動きでデバイスを操作できる眼鏡を発売した。そうやってより幅広い人に対して生活や人生を助ける製品を生み出していく。ファッション性だけでなく、より深いレベルでものづくりをしている。

われわれの2054年のビジョンは「近視をなくす」こと。近視がなくなれば眼鏡がいらなくなるか、というとそんなことはなく、より良い生活を得るための眼鏡を作っていきたいと考えている。

次ページアメリカ市場にこだわる理由
関連記事
トピックボードAD