野村総研、柳澤社長が激白。AI時代に求められる「コンソリ」の神髄とは?競争が激化する中、老舗コンサルタント会社としてどう対峙するのか。

――国内顧客のコンサルティング・IT投資に対する需要は旺盛です。背景に何があるのでしょうか?
人手不足が深刻になっているのが大きい。以前は2人体制で行っていた業務をワンオペにもっていかなければいけないという話はよく聞く。そうすると、現場のオペレーションの質を保つためには単に1人にするのではなく、省人化対応として、業務を自律的にこなすAI(人工知能)エージェントを置かないといけない。
業務プロセス全体で、AIエージェントを適用し、ワークフローを変えたいという要望はとても強い。たとえば流通・小売業では、すでに店舗での発注業務の自動化やECサイトで追加購入を促すレコメンド(推奨)機能でAIの活用が始まっている。
AIの活用は、在庫管理や配送の最適化などのサプライチェーン、さらにはデータに基づく販売や店舗の業務支援、商品のカテゴリー拡大にも広がる。最終的には基幹系のシステムと接続し、顧客が全面的にAIの効果を得られる形でつなげていきたい。当社によるAI関連の投資は2026年3月期において、前期比70億円増の170億円を見込んでいる。
――クライアントの側で既存ビジネスが成熟化している影響もあるのでしょうか。
日本企業は国内外で新たな成長を求めるべく、他産業に進出し、エコシステム(経済圏)の構築を模索している。例えば金融では、国が資産運用立国の実現に旗を振る中で、銀行・信託・証券の連携(いわゆる「銀信証連携」)が加速している。昨日まで競合だと思っていた証券会社が信託銀行と提携して、ビジネスの姿を変えていることがある。
鉄道会社を例にとっても、気がついたら(ネット企業などの)ポイント経済圏と戦っている。競争の場がずれていく時代において、コンサルタントが大きな構想を描き、多面的に支援する必要性が増している。
単なるIT・デジタルの導入では差別化できない
――AI開発についてはアクセンチュアなどが力を入れており、コンサル業界内での競争も激化しています。NRIの強みはどこにあるのでしょうか。
単なるIT・デジタルの導入ではなく、ビジネスをどうトランスフォームするのか、そもそもどうすべきなのかというところでコンサルタントの業務理解や提案能力が生きてくる。小売りであればセブン&アイ・ホールディングスをはじめ、かなり付き合いの長い顧客がいるし、顧客以上にコンサルタントが詳しいこともある。
そのあとにシステムをどう構築するか、AIをどう実装するかという話が出てくる。リアルタイムの情報がほしいのに、1日に1回バッチ処理(大量のデータをまとめて処理する手法)するようなシステムではだめで、システムのモダナイズ(老朽化したものの刷新)やクラウド化をしましょうとなる。
シンクタンクを起点とした顧客へのアプローチに始まり、こうした戦略立案からITの実現まで提供できるのが強みだ。コンサル機能と個別受注型のITソリューション機能を掛け合わせた、「コンソリューション」と当社では呼んでいる。
――コンサルは人気業種ゆえに、競合と人材の奪い合いが起きているのでは?
新卒採用については依然として競争力はあるが、油断できる状況ではない。優秀な人材の処遇が人材市場の中で見劣りしないようには意識をしており、大卒初任給をこれまでの27万6500円から、2025年4月から33万6500円に約2割引き上げた。
ただ、お金だけで動く人はわれわれの社風に合わないかもしれない。年収を理由に会社を選んだ人は、いい条件があるとすぐにまた別のところへ移ってしまう。そのため、優秀な人たちがやりがいを持って、仕事を通じて成長を実感できるように、AIやセキュリティの専門人材を育成する投資を増やすことなども意識している。
とくにAIについては、育成カリキュラムを展開し、10以上の研修プログラムを用意している。AIはコンサル、システム上流、開発、テスト、運用などあらゆる場面で必要となるため、誰もがAIを活用できるような社内環境の整備をつねに進めている。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら