台湾総統選挙「だから私はこの人に投票する」 台湾選挙のリアル①・三つ巴の戦いで有権者は
しかし最近の経済状況、とくにサービス業は萎縮したままだという見方もある。
台湾中部・彰化で有名なレストランを18年経営している施泓洋さん(60)は「内需は李登輝政権末期からずっと右肩下がりだ。2008年に馬英九政権になった後から両岸(中国と台湾)の交流が高まり、大陸から観光客も入ってきた。そのときはわずかだが右肩上がりに転じた」と言う。
だが、「蔡英文政権になってから、また不況になった。大陸から観光客が来ず、国内の消費者が金を使わなくなった」と打ち明ける。
コロナ禍では飲食業をはじめサービス業が大きな打撃を受けた。2021年5月から感染者が拡大したが、台湾政府は食堂内の食事禁止令を出し、一定期間は持ち帰りのみが許可された。
「国民党時代のほうが経済はよかった」
施さんは「このとき、収入はコロナ禍前の60%減。制限解除の後はゆっくり回復しているが、それでもコロナ禍前の70%程度」と肩を落とす。
経済成果をアピールする民進党とは、彼らの主張に実感が湧かず、国民との距離が広がっていると施さんは思う。エリートたちの傲慢さだけが目立ち、怒りさえ湧いてくると言う。
また、施さんは「民進党は間違いを起こしても、言い訳ばかりする」と不満げだ。これは国民党の支持者だけでなく、民衆党の支持者の中でも少なくはない批判でもある。
一例を挙げれば、2022年の桃園市長選挙の時、民進党候補の修士論文が「盗作ではないか」と指摘したことがある。このとき、民進党の多くの政治家たちが自党の候補を擁護した。大学教授出身の蔡英文も、「盗作ではないと信じたい」と発言した。
しかし、大学側が再審査会議を開いてこの候補の修士論文を「盗作」と判断、学位を撤回。この結果、民進党の他の市長候補さえも支持を失い、地方選挙で民進党は大敗に追い込まれた。
このスキャンダルから1年経ったが、まだ影響が残っている。とくに大学、大学院に進学した若い有権者が、民進党と蔡英文政権に大きく失望した。これにより若者たちの支持が民衆党へ向かった一因としても指摘されている。
1996年に総統の直接選挙が始まってから、施さんは一度も民進党候補に票を投じたことがない。国民党が2016年から2回連続で敗北し、施さんをはじめ国民党の熱烈な支持者はこれを苦々しく思っている。今度こそ政権交代となれば、ようやく希望が見えてくるという。
4人の有権者には、互いに共通する点も違う点もある。張さんと劉さんは相対的に革新的な価値を追求する。彼らは国民党がこれまで行ってきた親中的な行動や、高齢化社会と経済問題に対して解決策を示していない姿に憤り、国民党には一票を投じないという選択をしている。しかし、彼らの望む総統候補は違う。
一方、王さんと施さんはコロナ禍での防疫政策や経済成長ばかり自慢する民進党が気に入らない。ただ、彼らが望んでいるのは政権交代だ。このような状況に加え、有権者と各政党の計算がより多様化し、今回の総統・総選挙は従来になくさらに複雑化している。
台湾選挙のリアル② 台湾総選挙・支持者獲得では「空中作戦」も発生に続く
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