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日本は債務悪化で欧米各国の先を行くフロントランナー。インフレで家計負担が増す中、減税論台頭も政府債務の「長期的リスク」を抱えている

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インフレで家計負担が増す中、減税論が台頭。しかし、日本は政府債務という「長期的リスク」を抱えている。

日銀が行った異次元緩和により、インフレ時に柔軟に最善の策を取ることができないリスクがある (写真:PIXTA)

本稿執筆時点では、参議院選挙の結果はわからない。ただ、野党各党が掲げた公約には、消費税減税、所得税減税、社会保険料削減といったメニューが並ぶ。家計の負担軽減のために財政資源の投入を求める大きな世論が存在していることは疑いがない。

家計の負担軽減を求める世論が強まっている大きな理由は、2022年以降続くインフレで実質賃金が減少していることにあるだろう。この間、名目賃金は大幅に上昇しており、実質賃金の低迷は円安や資源高などによる外生インフレが主因とみるのが妥当だ。そうであれば、経済政策的には低所得者支援などの分配政策に集中すべきで、一律の大規模減税による需要刺激が正しい解とは思えない。

そういった純粋な経済政策の議論とは別に、昨今の各政党の主張には、欧米の政治的論調に単純に追随する傾向も見て取れる。「移民排斥」に類する主張などは典型だが、「中間層が虐げられている(=サラリーマンへの過重な負担)」→「だから減税が必要」といったロジックも、「白人中間層の没落」といった欧米社会の認識に似通う面がないわけではない。

日本の金融危機は欧米に先行

ここで冷静な認識が必要なのは、日本は欧米各国の先を行くフロントランナーだということだ。日本の金融危機(いわゆるバブル崩壊)は1990年代に起きたが、これは欧米の金融危機に十数年先行した。日本の金融危機は、1930年代の世界恐慌から約60年が経過して起きた、先進国で最初の本格的な金融危機だった。

日本の経済成長は金融危機の後、停滞期に入ったが、欧米でも同様の成長停滞がやはり十数年遅れて生じた。欧米の成長停滞期にインフレ率の低下が見られたのも日本と同様である。

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